タイトル |
野生種を含む寄主植物の違いによるアカホシカメムシの発育特性の違い |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2002~2003 |
研究担当者 |
Bui Thi Ngan(ベトナム
ワタおよび繊維作物研究所)
河野勝行
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発行年度 |
2003 |
要約 |
生存率や発育速度が異なる。
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背景・ねらい |
アカホシカメムシDysdercus cingulatus(ホシカメムシ科)は、アジアの熱帯・亜熱帯の棉作地域に広く分布し、ワタやオクラの果実や種子を吸汁加害する。本種は寄主植物としてアオイ科とキワタ科に特化しているが、多くの野生寄主植物を持つと同時に高い移動能力も持ち、外部から圃場に侵入して加害するため、圃場だけの防除では十分な効果が上がらない。したがって、作物以外の寄主植物における本種の発育に関する特性を明らかにすることは、圃場における本種の発生や侵入の時期の予測、防除適期の把握のために有効である。そこで、ワタ、オクラおよび東南アジアや石垣島において本種によって普遍的に利用されている野生寄主植物等の種子を餌として本種を飼育し、発育の温度反応を、寄主植物の種ごとに明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 幼虫期の生存率は、餌とした寄主植物の違いにより大きく異なり、栽培種であるトックリキワタ、ワタ、オクラ、野生種であるサキシマハマボウ、サキシマフヨウで高く、野生種であるリュウキュウトロロアオイ、オオハマボウ、タカサゴイチビで低い(表1
)。
- 幼虫期間は、餌とした寄主植物の違いにより大きく異なり、栽培種であるトックリキワタ、ワタ、オクラ、野生種であるリュウキュウトロロアオイ、サキシマハマボウ、サキシマフヨウで短く、野生種であるオオハマボウ、タカサゴイチビで長い(表2
)
- 幼虫期の生存率と幼虫期間の間には有意な相関が認められ、生存率が高いものほど幼虫期間が短い(幼虫期間および生存率は25 ℃のデータに基づき、検定はKendall
のτ でp 0.05)
- 卵期の発育零点は幼虫期の発育零点より高いが、餌とした寄主植物の違いがあっても、幼虫期の発育零点には大きな違いが無い(表2
)
- 種子の小さい寄主植物の中にもアカホシカメムシの幼虫期の生存率が高く、幼虫期間が短くなるものがあるが、種子の大きい寄主植物はおおむねアカホシカメムシの幼虫期の生存率が高く、幼虫期間が短い(表3
)。
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成果の活用面・留意点 |
- ワタとオクラは東南アジアで栽培されており、リュウキュウトロロアオイ、サキシマハマボウ、オオハマボウ、タカサゴイチビは、アジアの熱帯・亜熱帯地域に広く分布する野生のアオイ科植物である。
- 野生寄主植物のうちサキシマハマボウは、アカホシカメムシの発育にとって栽培種と同様に好適な寄主植物と判断されたので、特にそこでアカホシカメムシの発生に注意が必要である。
- 幼虫期の生存率と幼虫期間のいずれもアカホシカメムシの寄主植物の好適性の指標として使用できる。
- 野生寄主植物が自生している棉作地域において、それぞれの野生寄主植物における調査時の発生状態と、寄主植物ごとの発育特性から羽化時期が推定できるので、アカホシカメムシの圃場への侵入時期や防除適期を予測するために応用可能である。
- 東南アジアで見られる各種キワタ類(カポック)も、トックリキワタと同様の大型の種子をつけるので、トックリキワタと同様に、アカホシカメムシにとって好適な寄主植物だと予想される。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
病害虫
亜熱帯
オクラ
くり
防除
わた
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