タイトル |
農業社会化服務体系の整備における農民合作組織 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2004~2008 |
研究担当者 |
山下憲博
趙芝俊(中国農科院農業経済研究所)
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発行年度 |
2004 |
要約 |
〔農民合作組織(専業協会、新型合作社)の組織化は、農業産業化経営を補完するものとして取り組まれるようになったものであるが、
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背景・ねらい |
農業社会化服務体系の整備は中国共産党第16期3中全会における「決定」の中で農業・農村分野にかかる最重点の方針として盛り込まれたもので、中国においては補助金の直接支払い及び農業税減免の措置と並んで、農民収入向上実現のための具体的措置として重要な政策的課題となっている。このため、西部食糧主産区である四川省自貢市と東部食糧消費区である江蘇省張家港市を事例(表1)として、農業社会化服務体系の整備の実態を解析するとともにその改善方向を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 農業社会化服務体系とは、社会の各方面が様々な形態を通して農業経営者に対して行う農業生産の各段階において必要な各種経済的、技術的支援の全体を指すもので、その主な構成要素は、①村民委員会、②農民合作組織(専業協会、新型合作社)、③農業産業化経営組織(龍頭企業)、④農業技術普及組織、⑤農村経済支援部門(供銷合作社、農村信用合作社)、⑥その他(農業保険等)である。
- 以上の構成要素の中で、今後農民合作組織が経済的・技術的に中心的な役割を果たすことになると見られる理由は、従来、農民合作組織の組織化が政策的に取り組まれてこなかったことによる政策的インセンティブの大きさと、農民合作組織が加工・流通企業と分散する農家の仲介役となって「龍頭企業+農民合作組織+農家」という形態でのインテグレーションが成立するという経済的効果である。
- 龍頭企業を中心として生産流通のインテグレーションを図る「農業産業化経営」政策が龍頭企業と農家との間の矛盾の激化によって行き詰まりを見せており、農民合作組織はそれ自身が生産流通のインテグレーションの主体となり得る可能性を持つ。調査した一連の流れを通じて、農民合作組織が立法化措置による社会的認知を経ることにより、従来の中国の農業の生産流通のあり方を大きく変える可能性を有している(図1)。
- 農業技術普及組織は所管政府の財政状況により活動が大きく左右され、財政状況が厳しいところでは普及組織中の営利部門(生産資材販売)が増大化傾向にある。今後、営利部門と技術指導部門の分離による状況の悪化が懸念されており、農民合作組織に対する技術的支援面での期待がある(表 2 )。
- 東部沿岸地域では、農民合作組織が不動産業や流通業の分野で農外所得の増加によって農民収入を向上させる動きが活発になっているが、全体としては、地域の経済発展の動向にかかわらず、①法整備がなされていない、②政府依存体質が克服されていない、③加入者がまだまだ少数である(加入率は農家のうちの 3 ~ 6 %)、④食糧作物にかかる組織が少ない、等の課題がある(表 2 )。
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成果の活用面・留意点 |
- 対中国農林水産業行政の政策検討、日中間の農民組織交流にとって有用な情報となる。
- 事例調査は、限られたものであり、全国的には異なる状況も見られる。
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図表1 |
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カテゴリ |
加工
経営管理
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