タイトル |
イネに共生する窒素固定エンドファイトの新規グループ |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2003~2005 |
研究担当者 |
Adel Elbeltagy(Faculty of Agriculture
Minufiya University)
安藤康雄
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発行年度 |
2004 |
要約 |
〔圃場で栽培したイネからnifH遺伝子を培養を介さずに検出すると、既分離の窒素固定細菌のnifH遺伝子との相同性が低い配列が多数見つかり、これらは独立した一つのクラスターを形成する。
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背景・ねらい |
イネ科植物では植物体内に窒素固定細菌が共生的に生息していることが多数報告されていることから、これまでに各種イネ科牧野草から窒素固定能を有するAzospirillum属、Klebsiella属、Herbaspirillum属等の細菌を多数分離し、その系統解析や接種試験を行ってきた。しかし、これまでの培養法では、培養困難な窒素固定細菌が分離されない可能性が高い。すなわち、感染している窒素固定エンドファイトの一部についてのみの情報しか得ていないことが予想される。そこで、イネをモデル植物として培養を介さない分子生態学的手法を用いて解析し、共生する窒素固定エンドファイトの全体像を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- ほ場で栽培したイネの根と地際茎からDNAとRNAを抽出して、nifH遺伝子をターゲットとしてPCRあるいはRT-PCRを行い、それらの産物を大腸菌にクローニングしたのち、挿入断片の塩基配列を決定する。さらに、これらの塩基配列から推定されるnifHタンパク質のアミノ酸配列をもとに系統樹を作成する。
- 品種「スプライス」と「Tetep」の根および茎から抽出したRNAを増幅対象とするRT-PCRにより得られた塩基配列から推測されるnifHタンパク質のアミノ酸配列の多くは、既分離の窒素固定細菌のnifHタンパク質との相同性が低く、独立した一つのクラスターを形成する(図1、クラスターX)。両品種とも、根と茎を比べると茎のほうが新規クラスターに位置する配列の割合が高い(図2)。
- DNAを増幅対象とするPCRの結果でも、割合は低いものの新規クラスターに位置するアミノ酸配列がみられる(図2)。しかし、培養法でよく分離されるKlebsiella属(クラスターA)、Azospirillum属やHerbaspirillum属(クラスターB)、Paenibacillus属(クラスターC)等が属するクラスターの配列の検出頻度は、培養法で得られる場合に比べ低い。
- 以上の結果は、本グループの窒素固定細菌がイネの窒素固定エンドファイトの重要な構成要素であることを示唆している。
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成果の活用面・留意点 |
- 新規グループの窒素固定エンドファイトは、培養によらない方法によりその存在が示唆されたが、その実体は不明のままであるので、イネから菌の分離を行いその細菌学的性状を明らかにするとともに、接種試験を行い宿主との親和性を明らかにする必要がある。
- 品種・系統別、生育ステージ別、施肥条件別等の解析をさらに行い解析数を増やすとともに、量的解析を行い、新規グループの窒素固定エンドファイトの動態を明らかにする必要がある。
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図表1 |
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カテゴリ |
施肥
品種
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