アグロフォレストリーにおける上木間伐と土壌環境の変化

タイトル アグロフォレストリーにおける上木間伐と土壌環境の変化
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2000~2006
研究担当者 Jupiri Titin (サバ森林研究所)
稲垣昌宏(森林総研)
稲垣善之(森林総研四国支所)
太田誠一(京都大学)
発行年度 2004
要約 〔無降雨期間中の土壌水分の減少速度は無間伐林より間伐林で緩やかになった。間伐処理は林床 に植栽された作物等の苗木により良い光環境を提供することは良く知られているが、
背景・ねらい 熱帯地域ではアカシアやユーカリなど外来早生樹種の人工林が拡大している。これらは用材林として価値が低いばかりでなく、モノカルチャーであるがゆえに森林の多様性を低下させる要因ともなっている。これらの人工林にいろいろな有用樹種を樹下植栽し、また同時にその林内空間を農民に提供し作物や果樹等の栽培に活用させれば、地域農民の生活向上に貢献しながら、多様性のある熱帯林の再生が可能となる。
マレーシア・サバ州で実施中のアグロフォレストリープロジェクトは、上述のような森林再生を目標に、アカシアマンギウム等の人工林に対してフタバガキ類の苗や中間収入をもたらす果樹や薬用植物等の苗を植え込み育成させる技術を開発中である。その技術開発の第一歩は、上木の間伐による薄暗い林床の光環境の改善である。ここでは上木の間伐処理が生産基盤としての土壌にいかなる影響を及ぼすかを解析し、間伐が林床での作物栽培に及ぼす効果を評価する。
成果の内容・特徴
  1. アカシアマンギウム14年生人工林内に設定した無間伐区、東西方向および南北方向への列状の間伐区、裸地区における土壌深10cmの平均地温は、無間伐区で26.8℃、間伐区(南北)で27.5℃、間伐区(東西)で27.8℃、裸地で30.1℃となった。裸地の地温は日較差が大きく最高で34℃にまで達した。一方、無間伐区では、最高地温が28℃未満で、日較差も小さかった(図1)。間伐処理区では本数で33~66%の間伐が行われ、直達光が林内に入射し、光量が大幅に増えたにもかかわらず、上木による被陰の効果が未だ残っていた。日最高地温も30℃を超えることはほとんどなく、地温の上昇は低く抑えられていた。間伐林内では裸地の厳しい環境に比較し、良好な温度環境が植栽苗に提供されている。
  2. 試験林内の土壌水分は、降雨の発生と同時にいっきに増加し、その後、急速に減少後、無降雨が続くとほぼ直線的に減少し、乾燥化した(図2)。これらの減少を近似した一次式の傾きは、間伐の有無、および微地形間で有意差があった。同一微地形区分間で土壌水分減少を比較すると、無間伐区と間伐区の水分減少の傾きに有意差があり、間伐によって無降雨期間中の土壌水分減少が無間伐区に比べ緩やかになることが分かった(図3)。これは間伐によって林分からの蒸発散が減少することに起因していると考えられ、上木の間伐処理は、樹下に植栽される苗に対して良好な水分環境を提供することが分かった。
成果の活用面・留意点 外来の早生樹を主体とした人工林が東南アジアで数多く造成されている。緑で裸地をカバーするという初期の目的が達成された後、木材が利用できる樹木サイズになってきても手入れされず放置されたままの林が多く、今後の取扱いが課題となっている。そのような人工林の間伐促進や作物栽培による林床の有効利用を図る施策を行政府が展開する時に、この研究成果は重要な根拠データとして活用される。
図表1 214632-1.gif
カテゴリ 乾燥 土壌環境

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