地球温暖化が世界の食料需給に及ぼす影響の計量モデル分析

タイトル 地球温暖化が世界の食料需給に及ぼす影響の計量モデル分析
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2001~2005
研究担当者 古家 淳
小山 修
銭 小平
発行年度 2005
要約 気温と降水量の変化に対応するように改良した世界食料モデルによるシミュレーション計算では、気温上昇が、アメリカのトウモロコシ、コメ、大豆、EUと旧ソ連地域の小麦の単収を大きく引き下げ、世界全体のコメ生産を減少させる。このような温暖化の国際市場への影響は、国際貿易によって緩和される。
背景・ねらい  二酸化炭素等温室効果ガスの人為的排出による地球温暖化の問題が、近年大きな国際的研究課題に取り上げられている。農林水産業は、その生産が気象条件等環境に左右されることから、地球温暖化による食料生産への影響が強く懸念される。作物モデルを用いた地球温暖化の農業分野への影響予測は、多数行われているが、その需要と供給および貿易を考慮した世界の農産物市場への影響の分析はきわめて少ない。本研究では、世界食料モデルと新たに計測した気温と降水量を変数とする両対数型単収関数の計測結果を用いて、気候変化と世界の食料市場の関係を分析した。
成果の内容・特徴
  1. 単収(単位面積当たり収量)関数の計測結果(表1)は、降水量の増加が、トウモロコシとヒエ、アワなどの粗粒穀物の各国の単収を増加させることを示す。また、小麦について、カナダとオーストラリアの単収を増加させるが、EUとニュージーランドの単収を減少させ、さらに、ブラジルのコメとアメリカの大豆の単収を増加させることを示す。
  2. 単収関数の計測結果(表1)は、気温の上昇が、コメを除くほとんどの作物の単収を減少させることを示す。特に、気温上昇は、パキスタンの小麦、タイのトウモロコシ、インドの粗粒穀物とコメの大きな単収減少を引き起こし、南アジア地域の農業が、温暖化の影響を大きく受けることが予想される。
  3. 世界食料モデルを用いたシミュレーションは、次の仮定を置き、2001年から2025年までの期間について行った。(1)栽培暦は変化しない。(2)栽培地域は移動しない。(3)気候変動は単収にのみ影響を与える。(4)すべての国・地域において、作物が気候変化の影響を受けやすい開花期の気温が、前年に対して0.05%上昇する。(5)すべてのパラメータは変化しない。
  4. シミュレーションの結果、気温に変化がない場合に比べて、アメリカの粗粒穀物とコメ(図1)、インドの粗粒穀物とコメ(図2)、中国のトウモロコシ(図3)の生産量が温暖化の影響を大きく受けて減少することが明らかとなった。
  5. 全世界で見ると穀物生産量は、貿易のために温暖化の影響を大きくは受けない(図4)。このような結果は、温暖化が単収のみに影響を与える従来のモデルの結果と異なるものである。他の穀物に比較すると貿易額の小さなコメは、アメリカと南アジア地域の生産量減少のため、全世界で見た場合において温暖化の影響を受ける。

成果の活用面・留意点
  1. 栽培地域、たとえばアメリカのコーンベルトが、移動しないと仮定している。実際には、気温上昇にしたがって、各作物の栽培地域が北上すると考えられる。
  2. ここでは、各国・地域の気温が一律に年間0.05%上昇すると仮定しているが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)で用いられている予測値では、気温が高緯度地域では低緯度地域に比べて大きく上昇する。
図表1 214637-1.pdf
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カテゴリ あわ 小麦 大豆 とうもろこし ひえ

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