タイトル |
転写因子DREB1遺伝子の過剰発現によるイネの乾燥・高塩・低温ストレス耐性の向上 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2003~2006 |
研究担当者 |
伊藤裕介
桂幸次
篠崎和子
圓山恭之進
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発行年度 |
2005 |
要約 |
転写因子DREB1遺伝子を過剰発現させた形質転換イネにおいては、乾燥・高塩・低温ストレス耐性が向上した。この形質転換イネでは少なくとも12個の耐性の獲得に関与すると考えられる標的遺伝子の発現レベルの上昇が確認され、耐性獲得に機能することが知られる適合溶質のプロリンや糖類の蓄積が明らかにされた。
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背景・ねらい |
植物は劣悪環境状態になると、多数の耐性遺伝子群を働かせることにより劣悪環境に適応している。これまでにモデル植物のシロイヌナズナを用いて、これらの環境耐性遺伝子群の働きを調節している転写因子の一つDREB1Aを突き止めた。この転写因子の遺伝子をシロイヌナズナで過剰発現させると、得られた形質転換体はこれまでにない高いレベルの乾燥・塩・凍結耐性を示した。一方、このDREB1Aの相同性遺伝子をイネから単離してその機能を解析した。その結果、転写因子DREB1Aを介したストレス応答機構は、植物が共通に持っている環境ストレスに対する耐性獲得機構と考えられた。そこで、DREB1遺伝子を過剰発現させたイネを作出し、そのストレス耐性の向上を解析した。
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成果の内容・特徴 |
- イネのOsDREB1A、OsDREB1B、シロイヌナズナのDREB1A、DREB1B、DREB1C遺伝子を過剰発現する形質転換イネ(品種:キタアケ)を作出した。
- 得られた形質転換イネ(品種:キタアケ)は、DREB1遺伝子を過剰発現するシロイヌナズナと同様に、生長の遅れや矮化を示した。
- このDREB1遺伝子を過剰発現するイネ(品種:キタアケ)の環境ストレス耐性を調べたところ、形質転換イネは野生型のイネに比べ、乾燥、塩、低温ストレス下で高い生存率を示し、DREB1遺伝子を過剰発現することでイネの環境ストレス耐性が向上することが明らかとなった(図1)。
- DREB1遺伝子を過剰発現するイネ(品種:キタアケ)において、ストレス耐性の獲得に機能することが知られている適合溶質の含量を調べたところ、プロリン(図2)や各種糖類の含量が、野生株に比べ上昇していた。
- 分子生物学的解析を行うため、全ゲノム配列が決定されているイネの品種(日本晴)を用いて、イネのOsDREB1A、シロイヌナズナのDREB1A遺伝子を過剰発現させた。
- 得られた形質転換イネ(品種:日本晴)を用いて、アジレント社の22kマイクロアレイ及びノーザン法により解析し、12個の標的遺伝子が過剰発現していることを明らかにした(図3)。
- 過剰発現している12個の遺伝子中10遺伝子がストレス応答性を示し、8遺伝子のプロモーター領域にDREBタンパク質の結合配列であるDRE配列(A/GCCGAC)が存在することが確認された。
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成果の活用面・留意点 |
- イネにおいてもDREB1遺伝子がストレス耐性の獲得機構で機能することが確認されたので、コムギやトウモロコシなど、他の単子葉作物においてもストレス耐性の付与に利用できると期待される。
- DREB1遺伝子を過剰発現する形質転換体の矮化を防ぐためには、ストレス誘導性プロモーターの利用を図る必要がある。
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図表1 |
214640-1.pdf |
図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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カテゴリ |
乾燥
とうもろこし
品種
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