メコンデルタ水田における稲わら堆肥連用効果

タイトル メコンデルタ水田における稲わら堆肥連用効果
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 1999~2005
研究担当者 Duong Minh Vien(カントー大学)
Luu Hong Man
Vu Tien Khang(クローンデルタ稲研究所)
渡邉武
発行年度 2005
要約  メコンデルタ沖積土壌地帯での稲わら堆肥の連用試験において、化学肥料を慣行の40および60%減肥して稲わら堆肥を施用した水田は、化成肥料のみを慣行量施用した水田に比較していもち病発生時には罹患率が低くなり、統計的有意差はないものの6作目以降の収量が高くなる。
背景・ねらい  メコンデルタでは土壌有機物量が多く、毎年の洪水により上流から養分を含んだ沈殿物が供給されることもあり、ベトナム北部の紅河デルタと異なり、農地への有機物還元がほとんど行われていない。しかし、水稲3期作等農地利用の集約化と堤防等による洪水の防止により、今後土壌肥沃度が低下していく怖れがある。農家にとって化学肥料のコストは小さくなく、稲わら堆肥により化学肥料の投入量を削減できることが示されれば、稲わら堆肥利用を農家に普及させるために役立つ。長期連用試験を行い、稲わら堆肥と化学肥料削減の水稲収量および土壌に対する連用効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. メコンデルタ沖積土壌地帯にあるクーロンデルタ稲研究所内(ベトナム、カントー市、オモン郡)に連用圃場を設けて、稲わら堆肥を施用し化学肥料を減肥した水稲栽培を5年半のあいだに10作繰り返して、水稲収量等に与える影響を調査した(表1)。
  2. 稲わら堆肥(6Mg ha-1)を施用し化学肥料(窒素、リン酸、カリ)を対照より20,40,60%減肥した試験区と、化学肥料のみを施用し収穫後稲わらを持ち出した試験区とで1作(6作目)を除いて、水稲収量に有意差(Tukey法 危険率5%)は見られなかった。
  3. 6作目以降は、化学肥料のみを施用し収穫後稲わらを圃場から持ち出した試験区の水稲収量は、稲わら堆肥(6Mg ha-1)を施用し化学肥料を対照より20,40,60%減肥した試験区よりも常に低かったが、統計的には有意ではなかった(図1)。
  4. いもち病が発生した6作目(02-03乾季)と10作目(05雨季)では、化学肥料のみを施用した試験区の罹患率が高く(表2に6作目データを示す。)、収量が低かった。
  5. 全炭素、全窒素、可給態窒素など土壌の化学性に対する稲わら堆肥の連用効果は、5年半10作程度でははっきりとは示されなかった。もともとの土壌有機物量(表層0-10cmの全炭素が乾土に対して31.7gC kg-1 全窒素が同じく3.0gN kg-1)が多く、有機物の分解速度が遅い水田では、有機物施用効果はこの程度の期間では顕在化しないことが示された。

成果の活用面・留意点
  1. メコンデルタでは有機物の連用試験がこれまでほとんど行われていなかったため、本試験の結果は、ベトナム南部の農業研究者に有機物の施用効果に関する基礎的情報を与える。
  2. 6作目以降、化成肥料のみを施用した試験区の収量が稲わら堆肥と化成肥料を併用した試験区よりも低くなる傾向が見られたので、今後数年間、連用試験を継続する必要がある。

図表1 214642-1.pdf
図表2 214642-2.gif
図表3 214642-3.gif
図表4 214642-4.gif
図表5 214642-5.gif
図表6 214642-6.gif
図表7 214642-7.gif
カテゴリ 肥料 いもち病 コスト 水田 水稲

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