タイ国コンケン県における農業生産に関わる窒素循環の1990年から2000年への変化

タイトル タイ国コンケン県における農業生産に関わる窒素循環の1990年から2000年への変化
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2005~2005
研究担当者 Kobkiet Paisancharoen(タイ国農業局コンケン畑作物研究センター)
松本成夫
発行年度 2005
要約  東北タイのコンケン県における窒素循環の1990年と2000年の比較を行ったところ、農地における窒素収支は-23 kgN/haの収奪から+10 kgN/haの蓄積に変化した。これは、化学肥料施用量と作物残渣還元量の増加によるものである。一方、家畜糞尿投入量が減少しており、有機物よりも化学肥料により、農業生産が支えられる変化が起きている。
背景・ねらい  1990年のコンケン県は、作物生産に対して、化学肥料施用量が少なく、家畜堆肥の施用量も少なく、農地における窒素収支がマイナスになると見積もられ、土壌肥沃度の低下が懸念された(平成12年度成果情報)。その後、タイ経済は大きく発展し、それに伴い、化学肥料施用量が増大し、その一方で、水牛の飼養頭数が大幅に減少し、家畜堆肥を確保することが難しくなってきた。
 このような時代の変化により、窒素循環がどのように変化するのかを明らかにするため、2000-02年のコンケン県における窒素循環を見積もり、1990-92年の窒素循環との比較を行った。
成果の内容・特徴
  1. コンケン県の窒素循環の算定は、農業統計、家畜飼養や食料消費などの調査報告、作物残渣や家畜糞尿などの有機副産物の利用や施肥量などの現地調査、作物副産物の生産量や窒素含有率の測定結果、脱窒、窒素固定などの研究報告を用いて行った。
  2. 化学肥料施用量は、1990-92年の16kgN/ha/年から2000-02年の34 kgN/ha/年へと、2倍以上に増加した。これは、稲とキャッサバに対する施肥が、施肥基準の半分程度であるが、高まったためである。なお、サトウキビには1990年時点で既に施肥基準並みに施用されていた。
  3. 家畜糞尿の投入量は、1990-92年の28 kgN/ha/年から2000-02年の16 kgN/ha/年へと、約60%に低下した。これは、牛、豚、家禽の飼養頭羽数は増加したが、水牛の飼養頭数が大幅に減少したため、家畜糞尿生産量が減少したためである。
  4. 作物残渣の農地還元量は、1990-92年の4 kgN/ha/年から2000-02年の14 kgN/ha/年へと、大幅に増加した。これは、サトウキビ生産量の2倍以上の増加に伴い、その残渣(葉と梢頭部)が大量に発生し、さらに、この農地還元率が40%から54%に増加したことが大きく影響している。
  5. 農地における窒素収支は、1990-92年の-23 kgN/haの収奪から2000-02年の+10 kgN/haの蓄積へと変化した。これは、化学肥料施用で+18 kgN/ha/年、作物残渣還元で+10 kgN/ha/年と投入量が増加したことによるところが大きい。一方、家畜糞尿投入量は-12 kgN/ha/年と減少しており、有機物投入よりも化学肥料により、窒素供給が賄われ、生産が支えられるようになった。サトウキビ葉のマルチ利用、稲藁の堆肥利用など作物残渣の利用促進と、家畜糞尿を増やすための飼養体系・飼料供給体制の改善が必要と考えられる。
  6. 水系に出る人からの窒素量(主にし尿)は地下水の水質を悪化させる恐れがある。農地における+10 kgN/haの窒素量はたとえ溶脱したとしても水質悪化をもたらすことはないと思われる。

成果の活用面・留意点
  1. 窒素循環の算定には、各有機性副産物の処理・利用や農家の肥料施用量、農作物副産物の生産量などのデータが必要であり、他の地域で同様の算定を行う際には、これらのデータの収集が不可欠である。

図表1 214644-1.pdf
図表2 214644-2.gif
カテゴリ 肥料 さとうきび 施肥

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