生態系機能を利用した持続可能な循環型養殖システムモデル

タイトル 生態系機能を利用した持続可能な循環型養殖システムモデル
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2003~2005
研究担当者 Chumpol Srithong(タイ
カセサート大)
下田徹(水産総合研究センター)
藤岡義三(JIRCAS)
発行年度 2005
要約  持続可能なエビ養殖に果たす底生生物の役割を明らかにするとともに、生態系の生産機能と浄化機能を利用した環境にやさしい循環型養殖システムのモデルを開発した。
背景・ねらい  東南アジアではエビ類の沿岸養殖が急速な発展を遂げてきたが、マングローブ林の伐採による環境破壊とともに、単一種の集約的な給餌養殖による生態系の攪乱と有機汚濁が顕在化してきた。このため、天然餌料や自然循環機能を利用した低投入型の養殖技術を確立し、マングローブ生態系への負荷を軽減した持続的な生産システムを推進することが求められている。本研究では、底生生物が生態系の維持や持続可能な養殖システムに果たす役割について明らかにするとともに、生態系の生産機能と浄化機能を利用した環境にやさしい循環型養殖システムのモデルを開発した。
成果の内容・特徴
  1. タイ国、カセサート大学附属サム・ソンクラム水産研究所のエビ養殖池およびマングローブ植林池で見られた主な大型底生動物は、環形動物、軟体動物、節足動物の3分類群からなり、総種数は42種にのぼった(表1)。優占種はゴカイ類および巻貝類であり、多様性はマングローブ植林池の方がエビ養殖池よりも大きかった(表1)。エビ養殖期間中に底生動物が減少することから、ゴカイ類や貝類などがエビの天然餌料として利用されていることが明らかになった(図1)。
  2. サム・ソンクラム水産研究所内に造成した循環型養殖システムのモデルプラントを使用することにより、エビ養殖池の汚水を出水路→浄化池→入水路の順に循環させ、マングローブ、海藻、底生動物、プランクトン等の生態系機能を利用して浄化した後、エビ養殖に再利用することが可能となった(図2)。また、浄化池や水路においては魚介藻類の低密度無給餌養殖が可能となり、副次的な生産物として魚類(シーバス、ティラピア)、二枚貝(ホトトギスガイ)、甲殻類(テンジククルマエビ、ウシエビ)、海藻(ウミブドウ)、海草(カワヒルモ)等を養殖あるいは畜養出来ることが明らかになった。
  3. 循環型養殖システムを用いてウシエビ(ブラックタイガー)養殖の実証実験を行った結果、マングローブを利用した低密度での循環型システムで最適な養殖が可能であり、完全閉鎖系での集約的養殖システムに比べて、収穫時のエビのサイズが大きくなるとともに、天然餌料が利用出来たことにより約19%の人工餌料が削減された(表2)。収入と支出の収支面でも循環型システムの方が閉鎖型システムよりも有利であった(表2)。

成果の活用面・留意点
  1. 循環型養殖システムは周辺水系に対する依存度や環境負荷が比較的小さいことから、有機汚濁が進行した地域から自然環境保全地域に至るまで、さまざまな地域・環境下において活用出来る可能性がある。
  2. 適用にあたっては、天然の立地条件を活用することや、潮汐や風力などを利用した水交換システムを導入することにより、初期投資費用(原価償却費)やランニングコストを削減することに留意する必要がある。
  3. 周辺環境が劣悪な養殖池に本システムを適用する場合には、プランクトンや底生生物(貝類、海藻類等)の質や量を適切にコントロールして、効率よく栄養塩類や懸濁物を除去、分解する方策を検討することが重要である。

図表1 214652-1.pdf
図表2 214652-10.gif
図表3 214652-11.gif
図表4 214652-2.gif
図表5 214652-3.gif
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図表9 214652-7.gif
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図表11 214652-9.gif
カテゴリ コスト ぶどう

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