ウシエビと海ぶどうの複合養殖

タイトル ウシエビと海ぶどうの複合養殖
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2004~2005
研究担当者 Prapansak Srisapoome(タイ
カセサート大)
筒井功
浜野かおる
発行年度 2005
要約   汽水産エビ類の低投資で持続的な複合養殖技術の開発を目指し、ウシエビ(Penaeus monodon)と食用緑藻類のひとつである海ぶどう(クビレズタ:Caulerpa lentillifera)の混合飼育を行った。海ぶどうは高い水質浄化能力(溶存栄養塩吸収能力および物理ろ過能力)を持つばかりでなく、エビ鰓への付着生菌数を減少させ、飼育水中の生菌数を安定させ、エビ類に隠れ家を提供した。加えて、海ぶどうは高い成長率を示し、施肥を必要としなかった。
背景・ねらい  タイでのウシエビ(ブラックタイガー)養殖は、経済上非常に重要な位置を占めており、現在の年間生産量は800億バーツ(2006年1月現在、約2300億円)を上回っている。しかし近年、エビ養殖産業は微生物やウイルスによる病気の発生や成長率の悪化に直面しており、大きな問題となっている。本課題は、自然環境を維持しつつ低投資かつ持続的で環境に配慮した、汽水産エビ養殖技術ならびに管理技術を開発することを目的にしている。
零細エビ養殖業者の立場に立脚し、エビ養殖池内の水質を安価にかつ安定的に浄化するため、海藻類を利用する複合養殖を試みた。この方法では、植物プランクトンよりも安定的に生育させることができる海藻類でエビ池内の栄養塩類を吸収除去し、一方で、生産された海藻類を販売するなどして副収入を得ることができるので、もしエビ類が大量斃死などを起こした場合の「保険」にもなり、池の放棄・放置を食い止めることが可能となる。
成果の内容・特徴
  1. 2Lガラス水槽および2tFRPタンクによるウシエビと海ぶどうとの混合養殖において、養殖水中のアンモニア態窒素は顕著に減少し(図1)、溶存リンも微量であるが減少している。
  2. 本方法においてエビ鰓に付着している生菌数が減少し、飼育水中の微生物量が安定化している(図2)。
  3. 海ぶどうはエビ同士の接触を防止すると共に、残餌や糞が捕捉され物理ろ過の役割も果している(図3)。
  4. エビの成長は混合養殖によって阻害されず、エビ池でのウイルス感染によるエビの全滅を防いでいる。
  5. 本方法ではエビ類の残餌等から溶け出す栄養塩を利用するため、海ぶどうに施肥する必要はない。海ぶどうの成長は、施肥を必要とする海ぶどう単一養殖とほぼ同等の成長を示す(表1)。
  6. 海ぶどうは塩分25~35、水温23~33℃の範囲の環境適応力を持ち、細菌数および塩分等が変化しやすいエビ池においても飼育に適した種と考えられる。
  7. 海ぶどうの試食調査を行ったところ、特に食感が好評で、本種特有の味および香りについても問題なく、バンコクをはじめタイ国内の多くの場所で普及する可能性が高いことが期待される。

成果の活用面・留意点
  1. エビ養殖池の水質改善、持続的生産に有効である。
  2. 零細養殖業者に副収入を提供するための手段として有効である。タイ国内で蔓延しているウイルス病にエビが罹患した場合の代替の収入源となる。
  3. 海藻類は植物プランクトンよりも安定的に生育するため、良好な水質を長期的に簡単に維持できる。
  4. エビ養殖池における実証試験を今後重点的に行う必要がある。
  5. 収穫された海藻の加工・流通に関しての研究と、本複合養殖法の養殖業者への普及が必要である。

図表1 214653-1.pdf
図表2 214653-2.gif
図表3 214653-3.gif
図表4 214653-4.gif
図表5 214653-5.gif
図表6 214653-6.gif
図表7 214653-7.gif
図表8 214653-8.gif
図表9 214653-9.gif
カテゴリ 加工 管理技術 施肥 ぶどう

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