地中点滴灌漑では地表点滴灌漑に比べ初期生育が遅れるが、生育後期に根の活性を高めることでそれを補う

タイトル 地中点滴灌漑では地表点滴灌漑に比べ初期生育が遅れるが、生育後期に根の活性を高めることでそれを補う
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2001~2005
研究担当者 Khalilur Rahman(バングラデシュ
Nur Ahamed Khondaker(バングラデシュ農業研究会議)
ダッカ大学)
小沢 聖
中村 乾
発行年度 2005
要約  地中点滴灌漑では、地表点滴灌漑に比べ生育初期に養水分供給位置付近の根の分布が少ないため、生育が遅れる。一方、地中点滴灌漑では多くの根が養水分供給位置付近に達する生育後期に、根の活性が高まり生育が促進されることで初期生育の遅れが補われる。このことが、双方の灌漑方法における収量等の差が現れにくい要因である。
背景・ねらい  点滴灌漑は節水と増収の効果があることから1960年代に急速に広まり、この点滴チューブを地中に埋設する地中点滴灌漑は、チューブが耕起作業を妨げない、長期的な設置が可能、毎作の回収・設置の労力を軽減する等の利点から1960年代に利用され始めた。地中点滴灌漑は、根の活性の高い部位に直接養水分を供給できる利点がいわれているが、地中点滴灌漑と地表点滴灌漑で根の活性を比較した例は少ない。また、地中点滴灌漑は、地表点滴灌漑に比べ増収効果が述べられる一方で、海外の研究事例では年、場所により双方の収量の関係が異なるなど、その効果に疑問もあり、混乱をきたしている。そこで、地中、地表点滴灌漑で収量差が現れにくい理由を明らかにするため、点滴チューブ(Netafim Supertyphoon100)で水あるいは大塚ハウスA処方標準液の1/4濃度培養液を用い、栄養成長が持続し解析のしやすいキャベツを雨よけ栽培し、生育段階ごとに蒸発散速度、葉面積指数、根の活性、地上部乾物重等を比較する。
成果の内容・特徴
  1. 地中、地表から点滴灌漑したキャベツのそれぞれの灌水量、収量に顕著な差はない(表1)。
  2. 地中、地表から点滴灌漑したキャベツの生育段階ごとの蒸発散速度は、生育初期に地表点滴灌漑で、生育後期に地中点滴灌漑で高い(図1)。この関係は、葉面積指数においても同様である(図2)。
  3. 生育初期に地表点滴灌漑では地中点滴灌漑に比べ、養水分供給位置である地表付近で土壌水分の減少が速い。しかし、地中点滴灌漑での養水分供給位置付近の20cm深(供給位置下5cm)での土壌水分減少速度は、地表点滴灌漑での20cm深(供給位置下15cm)と比べ大きな差はない(表2)。このことは生育初期の地中点滴灌漑では、地表点滴灌漑に比べ養水分供給位置付近からの吸水が少ないことを示唆する。
  4. それに対し、生育後期の地中点滴灌漑の土壌水分減少速度は、養水分供給位置付近の20cm深とそれ以深の40cm深で地表点滴灌漑に比べ速い(表2)。また、この時期の根の分布は地中点滴灌漑で地表点滴灌漑より深く、単位根あたりのTTC還元活性で示される根の活性は高い(図3)。
  5. 地中点滴灌漑では地表点滴灌漑に比べ初期生育が遅れるが、生育後期に根の活性を高めることでそれを補うとみられる。これらのことが、両灌漑法による収量差が一般に現れにくい要因と考えられる。

成果の活用面・留意点
  1. 地中点滴灌漑は、生育後期に根の活性を高める利点がある。
  2. 従って、地中点滴灌漑は生育後期の根の高活性を利用するために、生育初期に灌水が不要な雨期から乾期に向かう作型に有効と考えられる。

図表1 214659-1.gif
図表2 214659-10.gif
図表3 214659-11.gif
図表4 214659-2.gif
図表5 214659-3.gif
図表6 214659-4.gif
図表7 214659-5.gif
図表8 214659-6.gif
図表9 214659-7.gif
図表10 214659-8.gif
図表11 214659-9.gif
カテゴリ キャベツ

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