タイトル |
開発途上国における高付加価値農業実現に向けての海外直接投資と食品製造業の役割 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2006~2011 |
研究担当者 |
宮田幸子(IFPRI)
胡定寰(中国農業科学院)
多田稔
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発行年度 |
2006 |
要約 |
アジア地域においては野菜・果樹や畜産等の付加価値の高い部門の生産が拡大するとともに、外国企業を中心とする食品製造業と農家との間で生産や販売に関する契約関係(垂直統合)が進展している。各国の農業付加価値の違いを統計的に分析した結果、農業生産における野菜・果樹の比率と食品製造業の付加価値が農業の付加価値向上に寄与することが解明された。また、外資比率の高い企業との契約農家は集荷業者に販売する非契約農家よりも高い労働生産性と土地生産性を持っていることが確認された。
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背景・ねらい |
農業生産の穀物部門から野菜・果樹等への多様化と海外直接投資に牽引される食品製造業の発展が農業の高付加価値化に貢献することを国別データによって分析するとともに、その結果を現地調査データによって補完する。この現地調査においては、契約農家を契約企業の外資比率によって「外資比率の高い企業との契約農家」、「外資比率の低い契約農家」と区分し、海外直接投資(FDI)の役割を評価するところに新規性がある。
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成果の内容・特徴 |
- 国別データによる統計分析として、農業従事者1人当たりの付加価値と耕地に占める野菜・果樹面積比率、農業従事者1人当たりの耕地面積、農業従事者1人当たりの食品製造業の付加価値、灌漑率、国民1人当たりのGDP(国内総生産)の関係を分析した。このうち、農業従事者1人当たりでみた食品製造業付加価値と農業付加価値の関係を図1に示す。この結果、農業生産の多様化と食品製造業の発展は農業の高付加価値化に貢献することが解明された。(ここでの重回帰分析の対象国はアジア14か国、中南米13か国、アフリカ14か国、計41か国であり、1995/96年と1999/2000/2001年の双方にデータ入手可能な国があるためサンプル数は68である。)
- 中国山東省におけるケーススタディとして、ネギ、リンゴ、鶏肉に関する契約農業を実施する企業を調査するとともに、契約農家と非契約農家の所得調査を実施した。なお、ここでの「契約」とは、一定の品質を満たした農産物を企業が事前の契約価格で買い取るというものである。
- その結果、契約農家には、講習会や技術者の巡回を通じて企業から生産技術が移転されるとともに、優良な農薬や肥料の割安価格による提供などの便宜が図られていることが解明された。
- 農家類型間での生産性を比較した結果、とくに外資比率の高い企業との契約農家は非契約農家と比べて高い労働生産性と土地生産性を示しており(図2参照)、食品の品質や安全性向上を通じて得られた企業の付加価値(利益)の一部が契約農家に還元されていることが解明された。
- どの農家類型においても平均作付規模は1ha未満である。また、契約農業への参加の有無と農家の作付規模や学歴の相関をみても有意な関係がみられなかった。したがって、契約農業への参加において小農民への障壁は無いと考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- 当研究成果は、開発途上国の食品製造業部門における外資導入の可否を決定するに際し、農業への影響から見た参考情報を提供する。
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図表1 |
214662-1.pdf |
図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
肥料
病害虫
高付加価値
鶏
ねぎ
農薬
りんご
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