モンゴルの首都近郊における酪農の経営向上に関する要因

タイトル モンゴルの首都近郊における酪農の経営向上に関する要因
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2004~2005
研究担当者 小宮山博
発行年度 2006
要約 首都ウランバートル近郊の集約的酪農世帯は、現状では純利益をあげている。搾乳牛一頭当りの乳量増加要因としては、濃厚飼料給与の増加と経営規模が大きいことが、また純利益率増加要因としては年間平均牛乳出荷価格の高いことと経営規模が大きいことが寄与している。
背景・ねらい
 モンゴル国では、現在でも遊牧による牧畜業が経済の柱となっているが、近年、1999/2000年から2001/2002年の3連続冬春期に半世紀ぶりの記録的な雪寒害(ゾド)に見舞われたことを背景に、遊牧をやめて都市近郊地帯に定住し、集約的畜産(特に酪農)を行う動きが見られている。また、政府も集約的畜産を政策的に推進している。
 農耕に適さない気象条件から、自然草地を季節的に移動する遊牧経営が適しているとされてきたモンゴル国において、近年急増している飼料生産・購入を伴う定住・半定住型の集約的畜産が、経営的に成り立っているのか、また、どのような経営が優れているのかを検証し、政府の政策に反映させる必要に迫られている。
 このため、酪農家の実態調査を実施し、酪農世帯の経営に関するデータを使用して、酪農世帯の経営分析を行った。
成果の内容・特徴
  1. 酪農がもっとも盛んであるウランバートル市の2地域(ガチョールト地区、ジャルガラント地区)及びウランバートル市を囲むトゥブ県の1地域(バトスンベル地区)において、母集団117酪農世帯から無作為に抽出した合計30酪農世帯を分析対象とした。酪農世帯の平均搾乳頭数は13.3頭(最低8頭、最高40頭)、一頭当り年間搾乳量は2085リットル(最低1141リットル、最高3660リットル)である(図1、図2)。
  2. 分析対象酪農世帯は、平均で233万トゥグリグ(約23万円)の年間酪農売上純利益(酪農売上高-酪農生産費)をあげており、その酪農売上純利益率(酪農純利益÷酪農売上高)は25.4%であった。
  3. 重回帰分析の結果、酪農経営向上の要因としては、「搾乳牛一頭当り年間牛乳出荷量」の増加には、「搾乳牛一頭当りの濃厚飼料を増加させること」及び「経営規模が大きいこと(搾乳牛15頭以上)」が有意に寄与し(表1)、「酪農売上純利益率」を高めるためには、「年間平均牛乳出荷価格が高いこと」及び「経営規模が大きいこと(搾乳牛15頭以上)」が有意に寄与する(表2)。

成果の活用面・留意点
  • 現状では、酪農経営は純利益をあげているが、酪農世帯が更に増加してくる中で、コムギ自給率の低いモンゴル国では、濃厚飼料の大部分を占めるフスマの供給には限界があり飼料価格の高騰が懸念される

図表1 214663-1.pdf
図表2 214663-2.gif
図表3 214663-3.gif
図表4 214663-4.gif
図表5 214663-5.gif
カテゴリ 経営管理 出荷調整 乳牛

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