アジア開発途上地域の農業技術開発目標の重要度

タイトル アジア開発途上地域の農業技術開発目標の重要度
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2003~2005
研究担当者 杉野智英
発行年度 2006
要約 アジア開発途上地域の農業研究者、普及職員及び農家の間には、農業技術の開発目標の重要度や、技術開発目標の達成により期待される効果の認識に差がある。特に農業経営・技術普及に関する研究については、貧困解消への寄与が農家から期待されており、この分野の研究成果を農業技術政策へ反映させる努力が、研究開発への信頼醸成のために重要である。
背景・ねらい
 研究資源が逼迫している開発途上国で効率的な技術開発を実施するには、技術開発目標の重要度を適切に評価することが必要である。このため、アジア開発途上地域8ヶ国(バングラデシュ、インド、インドネシア、ラオス、ミヤンマー、スリランカ、タイ、ベトナム)を対象として、域内の共通性の高い技術開発目標15項目を選定し、259名を対象としてアンケート調査を実施した。回答者の選定は、各国の調査協力者が行ったが、研究者だけでなく、技術政策に関与する行政機関の担当者、農家等が含まれるよう配慮した。調査には、科学技術予測調査(文部科学省)の手法を応用し、技術開発目標の重要度、期待される効果等を測定した。なお、15項目の選定に際しては、各国で実施された農村調査、統計分析、既存の研究成果の分析等に基づいて提案された農業技術開発目標の中から、二カ国以上から同様の提案があることを基準とした。
成果の内容・特徴
  1. 農業技術開発目標として「在来資源を利用した土壌肥沃度向上」、「病虫害や雑草との競合に対する耐性が高い新品種」、「収益性を向上させるための低投入型技術」といった労働集約的な技術開発が高い重要度を得た。一方、農村における過剰な労働力の存在を反映し、労働節約的(=資本使用的)な技術開発は、重要度が低いとの評価を得た(表1)。
  2. 技術開発の重要度を表す重要度指数が80を超えた6項目の技術開発目標のうち、「病虫害や雑草との競合に対する耐性が高い新品種」は、技術開発が貧困解消、中長期的な経済発展及び環境問題の解決に結びつくことが高く期待されている。「在来資源を利用した土壌肥沃度向上」、「畑作地帯における土壌浸食防止技術」は、環境問題への寄与が期待されているが、経済発展に結びつくことを期待する者は少ない。一方、「農産物の需要を増大させる食品・飼料加工技術」、「高温・乾燥等の条件下で安定した収量をあげる新品種」、「収益性を向上させるための低投入型技術」は、貧困解消及び中長期的な経済発展への効果が強く期待されているが、環境問題への効果を期待する者は少ない(表1)。
  3. 回答者のうち、「高温・乾燥等の条件下で安定した収量をあげる新品種」が環境問題に寄与すると考える者の割合は、研究者では高いが、普及職員、農家では低い。本技術を実用に結びつける努力が、普及職員、農家の技術開発に対する信頼を得るために必要である(図1)。
  4. 「低投入型技術の開発」が環境問題に寄与すると考える者の割合は、研究者では高いが、農家では低い。このことは、資材の過剰な使用に対する農家の認識が十分でないことを示唆している(図1)。
  5. 研究者は「経営の現況、新技術の普及動向の把握」に農家よりも高い重要度を与えた。一方、当該分野の研究の実施が貧困解消に寄与すると考えている農家の割合は研究者よりも高く、この分野の研究推進を農業技術政策に反映させ、貧困解消の実現に貢献することが求められている(図1)。

成果の活用面・留意点
  • 研究実施国の技術開発政策立案に使用される。各国の経済発展段階には差があるが、アジア諸国は急速な経済成長を続けており、開発の進展に伴い、技術の重要度も変化し得ることに留意する必要がある。

図表1 214664-1.pdf
図表2 214664-2.gif
図表3 214664-3.gif
カテゴリ 病害虫 加工 乾燥 経営管理 雑草 新品種

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