活性型に変換した転写因子の遺伝子DREB2Aを用いた乾燥・高温ストレス耐性植物の作出技術の開発

タイトル 活性型に変換した転写因子の遺伝子DREB2Aを用いた乾燥・高温ストレス耐性植物の作出技術の開発
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2004~2011
研究担当者 佐久間洋
篠崎和子
秦峰
圓山恭之進
発行年度 2006
要約 植物の乾燥と高温の両方のストレス耐性の獲得に働く遺伝子群を制御する転写因子遺伝子の活性化に成功した。この活性化した遺伝子を導入した植物では、乾燥や高温ストレス時に機能する複数の耐性遺伝子が強く働くようになり、乾燥ストレスにも高温ストレスにも高いレベルの耐性を示した。地球温暖化等の環境劣化に対応した作物の分子育種への応用が期待される。
背景・ねらい
 地球温暖化等により世界的規模の環境劣化や異常気象が問題になっており、環境ストレス耐性植物の開発は農業問題からも環境問題からも重要な課題となっている。本課題では、乾燥、塩害、急激な温度変化といった環境ストレスに対して耐性な植物の分子育種を目指して、転写因子遺伝子であるDREB2Aに関する研究を行っている。DREB2Aは環境ストレスに対する耐性の獲得機構で働く転写因子であり、一度に多数の耐性遺伝子を制御することから重要な有用遺伝子と考えられる。しかし、DREB2Aは、植物の中で合成されてもそのままでは機能しないことが示されている。そこで、DREB2Aの活性化の機構を明らかにし、活性化したDREB2Aを有用遺伝子として用いて、環境ストレス耐性植物の作出技術を開発する。また、DREB2Aが制御する耐性遺伝子群の同定を試みる。
成果の内容・特徴
  1. 乾燥ストレスによる遺伝子発現を制御するシロイヌナズナの転写因子DREB2Aは、植物の中で合成されてもそのままでは機能しないことが形質転換体を用いて示された。
  2. プロトプラストを用いたトランジェント発現系でドメイン解析を行い、DREB2Aタンパク質の中央部に、このタンパク質の活性化を抑える働きを持つ領域があることを明らかにした。
  3. GFPタンパク質とDREB2Aの融合タンパク質を導入した形質転換体を用いた解析により、植物中で合成されたままのDREB2Aタンパク質は、その活性化を抑制する領域の作用により、速やかに分解されてしまうために機能しないことを突き止めた。
  4. この活性化を抑制する領域を削り取って活性型に改変したDREB2Aを植物に導入すると、植物は乾燥ストレスに対して高いレベルの耐性を示した(図1)。さらに、高温ストレスにも高い耐性を持つことが明らかにされた(図2)。
  5. マイクロアレイ解析法でゲノム全体の遺伝子の働きを調べると、この植物中では多数の乾燥ストレス耐性遺伝子のほか、ヒートショックタンパク質等の高温ストレス耐性遺伝子も強い働きを示すよう変化していた。これらの耐性遺伝子の働きで乾燥と高温の両方のストレス耐性が向上したと考えられた。
  6. シロイヌナズナのdreb2a破壊株を用いて、マイクロアレイで同定された乾燥や高温ストレス耐性遺伝子の発現を定量PCR法で解析すると多くのストレス耐性遺伝子の発現が減少していた。また、これらの遺伝子のプロモーターにはDREB2Aの結合配列であるDREが存在することから、転写因子であるDREB2A直接の標的遺伝子と考えられた。

成果の活用面・留意点
  1. 活性型DREB2A 遺伝子は、地球温暖化に対応した作物の開発のための有力な遺伝子として利用できると期待される。
  2. DREB2Aの相同遺伝子はイネ等の単子葉植物も含めた多岐にわたる作物種に存在していることから、種々の作物で乾燥と高温の両方に耐性な作物の開発に利用できると考えられる。

図表1 214665-1.pdf
図表2 214665-2.gif
図表3 214665-3.gif
カテゴリ 育種 乾燥

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