タイトル |
バッファーチャンバー方式ガス収支測定法 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2006~2010 |
研究担当者 |
小田正人
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発行年度 |
2006 |
要約 |
閉鎖式チャンバーを測定チャンバーとバッファーに分割し、ガスを循環させ、バッファーのガス濃度変化を測定することで、精度の高い測定を行うガス収支測定法。安価なセンサーで計測装置を自作でき、とくに野外での計測に威力を発揮する。センサーの組み合わせで動物の代謝、光合成蒸散、地表面蒸発、土壌呼吸などに幅広く利用できる。
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背景・ねらい |
チャンバー方式のガス収支測定法には通気式と閉鎖式がある。前者は外気の変化の問題、後者はチャンバー内のガス濃度変化が測定対象へ影響を及ぼす問題がある。加えてともにチャンバー内の濃度ムラの問題がある。そこで、これらの問題を解決する計測手法を開発した。
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成果の内容・特徴 |
- 構造: 閉鎖式チャンバーを測定チャンバーとバッファーに分割し、ガスを循環させ、バッファーのガス濃度変化を測定する(図1)
- 応答ラグの計算式: 構造上応答ラグが生じるが、チャンバー・バッファー間のガス置換の漸化式(数式1)により計算できる。これに、センサーの応答ラグを合わせれば正確に応答ラグを推定できる(図2)。
a[n+1]=(a[n]+b)・(1-c)+c・a’[n] a’[n+1]=a’[n]・(1-c/d)+(a[n]+b)・(c/d),a[1]=a,a’[1]=a'数式1 a:チャンバー濃度,a':バッファー濃度,b:チャンバー濃度変化,c:置換率,d:バッファー倍率 a[n+1]=(1-c)・a[n]+c・b, a[1]=aセンサーの応答ラグ(拡散式サンプリングの場合) a:内気濃度(センサーの表示値),b:外気濃度,c:置換率
- 精度検定法: 既知濃度のガス(例100% CO2)を注射針等で注入し、一定時間間隔で測定し、安定するまで計測を続行する。これにより、キャリブレーションとともに、安定時間から感度と気密性を確認する。
- 利点:
a. 外気の変化を受けない安定した計測。 b. 循環機構とバッファーの攪拌により濃度ムラを解消した高精度の測定。 c. バッファーの容量を変え、ガス濃度の変化速度を調節することで幅広い対象、センサーの特性に対応。 d. 機密要求性が低く製作が容易。 e. 1組のセンサーで計測可能。 f. 民生品センサーを活用して安価に製作できる(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- センサーの組み合わせにより、地表面蒸発量、土壌呼吸、光合成蒸散測定、動物の代謝の測定など多方面に活用できる。また、安価で維持管理が容易なセンサーを用いることで低価格な装置の組み立てが可能であり、途上国での汎用的用途また日本国内での教育現場での利用が考えられる。
- 連続測定したい場合は、タイマーと換気ファンを追加し、ロガー付センサーを用いるか、あるいは、ダブルバッファーとし、バッファーの切り替えと換気を繰り返すことで可能。
- 測定チャンバーの置換率は、測定装置の応答速度に大きく影響する。用途により異なるが、毎秒、測定チャンバーの30%のガスが置換されれば広範な測定に対処できる。
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図表1 |
214671-1.pdf |
図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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