衛星データの解析によるモンゴル国全域での植生変動傾向

タイトル 衛星データの解析によるモンゴル国全域での植生変動傾向
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2011
研究担当者 Naran-Ochir
Tumenjargal (モンゴル国立農業大学)
下田勝久
鬼木俊次
山崎正史
小宮山博
鳥山和伸
平野聡
発行年度 2006
要約  衛星データから得られる植生情報を用いて,モンゴル国全域における1981-2003年の長期植生変動傾向(植生トレンド)と市場経済の導入前後における植生トレンドを求めて,時空間分布を明らかにした。国全域におよぶ植生劣化や際立った砂漠化傾向は見られなかった。しかし,1990年代初頭の市場経済化以降には都市周辺などに劣化傾向の集中が見られており,今後の対策が必要である。
背景・ねらい
 モンゴル国は1990年代初頭に社会主義経済から市場経済へと移行した。以降,家畜頭数の急増に伴う植生劣化が報告されている。さらに近年,地球規模の気候変動による砂漠化の進行も指摘されている。一方,モンゴル草原の牧養力にはまだ余裕があるとするものもあり,客観的な状況把握には至っていない。そこで,衛星データから得られる植生情報を使ってモンゴル植生の変動傾向(トレンド)を解析し,過去20年余りのモンゴル国全域での植生トレンドの時空間分布を明らかにした。
成果の内容・特徴
  1. 植生変動以外の要素を校正した1981-2003年の正規化植生指数(NDVI)データ(米国メリーランド大学提供GIMMS/NDVIデータ:8kmピクセル)を使って,各ピクセルにおける年間の最大NDVI値をその年の植生状況の代表値とし,年々変動を直線回帰して「傾き」を求めた。さらに,t-検定で有意な変動を示すピクセルのみを抽出して傾きに応じたクラス分けを行い,その時空間分布を解析する手法を開発した。
  2. 1981-2003年の長期植生トレンドによれば,10%水準で有意な変動を示した地域の面積は国土全体の約11.8%であった。劣化傾向を示した面積は国土全体の3.1%にとどまり,回復傾向を示した8.4%と比べても小さかった。よって,モンゴル全域で植生が著しく劣化しているとの通説とは異なる結果となった(図2)。全体的な構図としては,モンゴル国中央部から北部にかけて劣化傾向が見られた。
  3. 社会主義経済下にあった1981-1990年で有意な植生変動を示した地域は全体の約15.4%だったが(劣化1.6%,回復12.2%),そのほとんどが回復傾向を示した東部に集中した(図3)。一方,市場経済へ移行後で雪寒害の相次いだ2000年以降を除いた1990-1999年では,一転して劣化傾向が卓越した(劣化4.6%,回復1.7%)。ただし,有意な変動を示した地域の合計面積は全体の約6.4%にとどまり,大きくはなかった(図4)。局地的な劣化傾向が見られた中北部においてGPSを用いた現地踏査およびピクセルサイズ15-30mの衛星画像を用いた判読を行ったところ,NDVIの低下は耕作地・耕作放棄地が広く見られる地域に多く分布していることが明らかになった。また,ウランバートルとダルハンの2大都市周辺で土地利用変化が著しい地域にNDVIの低下が見られることも判明した。

成果の活用面・留意点
  1. 一般に,NDVIは乾燥地など植生の疎らな地域では背景の土壌からの放射量の影響が強くなり,見かけの植生指数が大きくなることが知られているため、解析手法の適用に制約があることに留意する必要がある。

図表1 214674-1.pdf
図表2 214674-2.gif
図表3 214674-3.gif
図表4 214674-4.gif
図表5 214674-5.gif
カテゴリ 乾燥 GPS ブロッコリー

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる