タイトル |
水供給変動がカンボジアのコメ市場に及ぼす影響 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2003~2007 |
研究担当者 |
古家 淳
山本由紀代
小林慎太郎
鈴木研二
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発行年度 |
2007 |
要約 |
水供給変動の影響を把握することが可能なカンボジアのコメ需給確率モデルを開発し、各県のコメ生産および価格の動向を分析した。予期しない水供給変動が生じた場合、標高の高い地域と洪水の被害を受けやすい地域の作付面積変動が大きくなり、また、価格が上方へ変動する確率が高くなる。
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背景・ねらい |
食料生産は、水循環・水資源の変動による水供給、水質などに大きく影響されるとともに、農業用水の利用を通じて水需要を変化させる。水供給の変動は、安定的な食料供給を脅かす可能性があり、地域的に異なる水需給の変化や異常気象、気候変動等による水循環・水資源の変化と、それぞれの地域の食料生産との相互影響メカニズムを特定、評価するとともに、農産物市場での影響を分析することが重要な課題となっている。このため本課題では、水位の変化の激しいメコン川に水供給の多くを依存するカンボジアの稲作を対象に、河川流域に近似する県(province)単位の分析が可能で、かつ、コメに関する水供給変化が把握可能な需給モデルを新たに開発した。この需給モデルをさらに確率モデル化し、水供給変動がカンボジアのコメ生産・市場に及ぼす影響の分析を行った。
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成果の内容・特徴 |
- モンスーンの影響により季節間の水位の差が大きなメコン川下流域に属し、水供給の変動が大きく洪水被害が頻発するカンボジアを対象に、水供給変化を考慮し、また、小流域に近似する県別の分析が可能なコメの需給モデルを開発し、コメの需要と供給の動向を検討した。さらに同モデルを確率モデル化し,作物に対する水供給量に相当する蒸発散量の変動が各県のコメ生産と市場に与える影響を検討した。
- カンボジア全国における雨期作の生産量変動について、第90と第10百分位点(percentile)の差は、40万t程度であり、予測期間の平均生産量の約10%である(図1)。なお、この第90と第10百分位点の間には、乱数発生シミュレーション結果のおよそ80%が含まれる。一方、乾期作の生産量の変動について、コメ生産量の第90と第10百分位点の差は、18万t程度であり、予測期間の平均生産量の約17%である(図2)。相対的に見ると、乾期作の方が雨期作よりも生産量の変動が大きい。
- 予期しない水供給の変動が20%増加した場合、コメ生産量の第90と第10百分位点の差は、雨期作について50万t程度に、乾期作について22万t程度に拡大する(図1、図2)。生産量に対して雨期作は2.5%ポイント、乾期作は3.8%ポイントの拡大であり、乾期作は水供給変動の影響を受けやすい。
- 水供給の変動が雨期作の作付面積に与える影響を見た場合、東部のRottana Kiri県、Mondol Kiri県、西部のKoh Kong県など標高の高い地域と、洪水の被害を受けやすいPhnom Penh市とPrey Veng県で作付面積が大きく変動する(図3)。
- コメの生産者価格の変動について、平均値と第10百分位点までの差が2284円/tであるのに対して、平均値と第90百分位点までの差は2328円/tであり、上方の幅が広い。また、水供給の変動が20%増加した場合、上方へ596円/t、下方へ342円/tさらに拡大する(図4)。これは、水供給のさらなる変動の増加は、コメ価格を大きく引き上げる可能性が高いことを意味し、貧困者の生活に悪影響を及ぼすことが予想される。(2002年平均為替レート、1=31.57rielで計算)
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成果の活用面・留意点 |
- シミュレーションの期間は、2001年から2015年までである。
- 人口、GDP、消費者物価指数、為替レートは、近年の成長額あるいは量が将来継続すると仮定している。
- 収量(面積当たり生産量)は、過去のトレンドが継続すると仮定している。
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図表1 |
214688-1.pdf |
図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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図表8 |
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図表9 |
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図表10 |
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図表11 |
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カテゴリ |
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