イネの環境ストレス応答性プロモーターと転写因子OsNAC6を用いた環境ストレス耐性イネ作出技術の開発

タイトル イネの環境ストレス応答性プロモーターと転写因子OsNAC6を用いた環境ストレス耐性イネ作出技術の開発
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2004~2011
研究担当者 伊藤裕介
篠崎和子
中島一雄
圓山恭之進
発行年度 2007
要約 イネのOsNAC6タンパク質は環境ストレスに対する耐性の獲得機構で働く転写因子である。OsNAC6をイネ中で多量に作らせると、環境ストレス時に機能する複数の耐性遺伝子が強くはたらくようになり、乾燥および塩ストレスに高いレベルの耐性を示すが、植物には生育阻害が見られる。イネのストレス誘導性プロモーターを利用して、ストレスを受けたときにOsNAC6を多量に作るように改変したイネでは、生育阻害が改善される。
背景・ねらい
 植物は劣悪な環境になると、多数の耐性遺伝子群を働かせることにより耐性を獲得して適応している。これらの環境ストレスに対する耐性の獲得機構で働く転写因子は、一度に多数の耐性遺伝子を制御して、高い耐性を植物に付与するため重要な有用遺伝子と考えられる。本研究課題では、単子葉のモデル植物であり重要な穀物でもあるイネが乾燥などの環境ストレスを受けた時、多量に合成される転写因子OsNAC6に関する研究を行っている。OsNAC6遺伝子と、イネのストレス誘導性プロモーターを利用して、生育阻害がほとんど見られることなく、ストレス耐性が向上したイネを作出する技術を開発する。
成果の内容・特徴
  1. イネのNAC型転写因子OsNAC6の遺伝子は、乾燥、塩ストレス、低温といった環境ストレスだけでなく、いもち病菌の感染および傷害ストレスに対しても応答して発現することを見出した。
  2. トウモロコシの恒常的にはたらくプロモーター(遺伝子発現を調節する領域)であるユビキチンプロモーターを用いてOsNAC6遺伝子を過剰に作らせたイネでは、初期生育不良と種子収量の減少が見られたが、イネのストレス応答性のプロモーターであるOsNAC6プロモーター(POsNAC6)およびLIP9プロモーター(PLIP9)を用いて、OsNAC6遺伝子を過剰に作らせたイネでは、初期生育の不良および種子収量の減少が軽減した(図1a、b)。
  3. POsNAC6およびPLIP9を用いて、OsNAC6と蛍光を発するクラゲのタンパク質であるGFPを融合したタンパク質の遺伝子を発現させたイネでは、乾燥ストレスあるいは塩ストレスを受けた際、細胞核にOsNAC6-GFP融合タンパク質が蓄積することが確認された(図1c)。
  4. POsNAC6およびPLIP9を用いて、OsNAC6遺伝子がストレス時に強くはたらくように改変したイネは、幼苗期において、塩ストレスに対して、高いレベルの耐性を示した(図2)。幼苗期における乾燥耐性も向上した。
  5. マイクロアレイ解析法により、OsNAC6遺伝子を過剰発現させたイネにおけるゲノム全体の遺伝子の発現を調べると、パーオキシダーゼをはじめ多数のストレス耐性に関わるタンパク質の遺伝子が強く発現していた。これらの耐性遺伝子のはたらきでストレス耐性が向上していると考えられた。
成果の活用面・留意点
  1. イネのOsNAC6 遺伝子は、塩ストレスおよび乾燥ストレスに対する耐性が向上したイネ科作物を開発するために利用できると期待される。ただし、幼苗期のストレス耐性は確認したが、成体における耐性および圃場での塩耐性、干ばつ耐性については、今後の解析が必要である。
  2. イネのストレス応答性プロモーターであるPOsNAC6およびPLIP9は、OsNAC6など、ストレス耐性向上と同時に生育阻害も引き起こすタンパク質の遺伝子を利用して耐性イネ科作物を開発する際に利用できると考えられる。しかし、今回単離されたプロモーターを用いても若干の生育阻害が認められたことから、より優れたストレス応答性プロモーターの探索あるいはプロモーターの改良を行う必要がある。
図表1 214694-1.pdf
図表2 214694-2.gif
図表3 214694-3.gif
図表4 214694-4.gif
図表5 214694-5.gif
図表6 214694-6.gif
図表7 214694-7.gif
カテゴリ いもち病 乾燥 とうもろこし

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