低投資・環境共生型ウシエビ・海藻混合養殖技術の開発

タイトル 低投資・環境共生型ウシエビ・海藻混合養殖技術の開発
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 Dusit Aue-umneoy(タイ
Prapansak Srisapoome(タイ
カセサート大)
キングモンクット大)
筒井功
浜野かおる
発行年度 2007
要約 東南アジア諸国に多い小規模・零細エビ養殖業者も適用可能な低投資で環境負荷の少ない、安定したウシエビ養殖技術の開発を目指し、数種の海藻類との混合養殖実験を行った。シオグサ科植物およびクビレズタとの混合養殖は、エビの投餌量や養殖池環境維持費の削減を可能にし、従来の養殖法よりも生産効率を向上させた。
背景・ねらい
 東南アジアにおける汽水産エビ養殖は経済上非常に重要な位置を占めている。しかし近年、東南アジアにおける多くの汽水産エビ類の集約的養殖は、微生物やウィルスによる病気の発生や成長率の悪化に直面している。一方、マングローブ林をできる限り残した状態で利用する伝統的な粗放的養殖では、広大な敷地を必要とし生産性は低いものの、疾病はほとんど見られない。
 本課題は、自然環境を維持しつつ低投資かつ持続的な汽水産エビ養殖技術を開発することを目的にしている。病気に罹患しにくい健康なウシエビ(Penaeus monodon)を集約的に生産するために、現在主流であるエビ単一の集約的養殖池の中に海藻類を生育させ、自然に近い環境を作り出す。海藻類にはウシエビの餌となる種および隠れ家となる種を選択する。このように機能の異なる海藻をエビと共に養殖することによって、水を浄化しながら、ウシエビの耐病性強化およびストレス軽減をはかる。
成果の内容・特徴
  1. ウシエビの生理的特徴として水温、塩分の適応範囲が約10-40℃、0-50ppt と広い。シオグサ科植物2種(ナガモツレ: /Rhizoclonium tortuosum/および シオグサ属の一種: /Cladophora/ sp.)は広塩性で7-75pptまで生育が 可能であり、塩分変動の激しい汽水産エビ養殖池に適している。一方、クビレズ タ(/Caulerpa lentillifera/)は18-38pptにおいて生育可能で、乾季沿岸部における汽水産エビ養殖池に適応可能である(図1)。シオグサ科植物 2種およびクビレズタはともに水温20-30℃で生育が良好であり、エビ養殖 池に適用できる。
  2. 2Lガラス水槽でウシエビを海藻類と混合養殖すると、養殖水中のアンモニア態窒素が顕著に減少する。そのため、水交換をしなくとも溶存無機態窒素濃度を低く保つことができる(図2)。
  3. ウシエビは対照区および海藻混合区ともに人工餌料を充分与えられているにも関わらず、海藻類を積極的に摂餌する。特にナガモツレはウシエビの成長を促進する(図3)。
  4. クビレズタはウシエビには摂食されにくいが、成長したエビの脱皮時等の隠れ家として利用される。海藻内の水温は海藻外と比較して日較差が1℃ほど小さく、安定している。
  5. 通常100%の死亡率を示すイエローヘッドウィルス病感染後も、海藻との混合養殖では約10%が生存し、平均約30gのウシエビが養殖開始5ヵ月後の収穫時には平均約50gと成長する。海藻摂食によってあるいは海藻による環境の安定化によってウシエビ免疫系が亢進し、生残すると考えられる。
  6. 本技術の実証試験によると、従来の単一養殖法と同等の収量が得られるにも関わらず、投餌量が抑えられるため、増肉係数が低くなる。また、海藻により水質が安定するため、大型曝気装置や水交換のような池環境維持のための電気代等のコストが抑えられ、生産効率が向上する(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. 一つの池で実施可能で広い土地を必要としないため、零細養殖業者にも適用が可能であり、各地で蔓延しているウィルス病被害も軽減できる。
  2. 気候の異なる地域での実証試験を行い、地域毎に適切な海藻類を選択する必要がある。
  3. 混合養殖に利用した海藻も収穫して有効利用するには、加工・流通に関しての研究が今後必要となる。
図表1 214705-1.pdf
図表2 214705-2.gif
図表3 214705-3.gif
図表4 214705-4.gif
図表5 214705-5.gif
図表6 214705-6.gif
図表7 214705-7.gif
図表8 214705-8.gif
図表9 214705-9.gif
カテゴリ 加工 コスト

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