MODISを用いて中国黒龍江省における水稲作付域の変化を把握する

タイトル MODISを用いて中国黒龍江省における水稲作付域の変化を把握する
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2004~2008
研究担当者 矯江(黒龍江省農業科学院)
内田 諭
発行年度 2008
要約 広域観測が可能な衛星データであるMODISデータを用い、中国東北部の代表的稲作地帯である黒龍江省全域に渡る毎年の水稲作付域を把握する手法を開発した。これにより、近年継続的に水稲が作付けられている地域、また、作付域の拡大や縮小が見られた地域の空間分布が示される。
背景・ねらい
 黒龍江省は、江蘇省と並ぶ中国におけるジャポニカ米の最大の生産地であり、その作付面積は、1990年代半ばから急増してきている。近年においても、水稲作付面積が年々変動していることが省単位の統計値として示されているが、省内での分布とその変化に関する情報は整備されていない。そこで、広域観測が可能な衛星データを活用して、水稲作付域の抽出を行い、その分布状況を迅速にデータ化するための手法の開発が求められている。省レベルの広域を観測する衛星データの空間分解能は高くないため、ここでは水稲作付域の画素内面積率を求めることで、算定精度の向上を実現する。そして、2003年から2008年までのデータに適用し、黒龍江省における水稲作付域の空間分布と近年の変動の特徴を明らかにする。


成果の内容・特徴
  1. 空間分解能が250 mであるMODISのバンド1(B1)およびバンド2(B2)、500 mであるバンド7(B7)の反射率に換算されたデータ(農林水産衛星画像データベース(SIDaB)より提供:全バンドデータの画素サイズをリサンプリングにより250 mに加工)を用い、黒龍江省における水稲移植期に当たる5月下旬から6月中旬における雲の影響を除去した画像データを作成した。従来の手法(可視・近赤外バンドによる土地被覆構成比率の推定)を発展させ、水域と裸地の識別に有効な中間赤外バンドを含む情報として2個の指標値(NDBSI = (B7-B1)/(B7+B1):正規化裸地指数、NDVI = (B2-B1)/(B2+B1):正規化植生指数)を求め、両指標値の2次元散布図から定義される1個の指標値を提案した。これを用い、湛水状態にある水稲作付域を湖沼等の水面と識別し、裸地、常緑樹による植生との混在状態を判定して、1画素毎に水稲作付域の面積率を算定するモデルを開発した。
  2. 判別精度は、空間分解能が異なる複数の衛星データによる判読・分類結果を多段階的に用いることで評価した。一定の広がりがある区域を対象に算定面積を比較した結果、画素単位の分類では、分布域の多くが抽出されずに全体として約40%過小であったのに対して、本手法では、他の土地利用と混在する場合に対しても適切に抽出された(図1)。県単位の作付面積を、Landsatデータ、および、本手法でMODISデータから算定した結果、両者は原点を通る直線近似において決定係数(R2)=0.976の相関を示した(図2)。
  3. 2003年から2008年の黒龍江省水稲作付分布図を作成し(図3に2008年の分布図)、主要稲作地帯が省内中部から西部にかけての河川沿いの地域、および、東部の三江平原に広く分布する状況が示された。
  4. 算定した水稲作付面積を県別に集計し、2003年から2007年の変化を調べたところ、省内東部および中央部に位置する県において、増加傾向が顕著であったことが示された(図4)。


成果の活用面・留意点
  1. 本手法により、広域を対象に任意の区画における水稲作付分布を求めることができ、土地利用・水資源利用とその経年変化の正確な把握のため活用される。また、作付直後の時点でデータを得ることが可能であって、速報性に利点があり、地域毎の生産量を事前に把握し、コメ需給の短期的予測に活用される。
  2. 本手法は、水稲移植が同時期で、その時点で畑地がほぼ裸地状態にある地域への適用が可能であるが、湿地性の植生等との識別に関しては、課題が残されている。

図表1 214708-1.pdf
図表2 214708-2.gif
図表3 214708-3.gif
図表4 214708-4.gif
図表5 214708-5.gif
図表6 214708-6.gif
図表7 214708-7.gif
図表8 214708-8.gif
図表9 214708-9.gif
カテゴリ 加工 水稲 データベース

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