タイトル |
イネのオゾン耐性に関与する遺伝子座の検出 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2006~2011 |
研究担当者 |
Matthias Wissuwa
Michael Frei
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発行年度 |
2008 |
要約 |
オゾン耐性に関わる品種間差異を検定し、Kasalathがオゾン耐性品種であることを明らかにした。感受性の日本晴とKasalathとの分離集団を用いたQTL解析から、葉の褐変化とバイオマス低下に関与する5つのQTLを同定した。オゾン耐性品種、および耐性遺伝子のQTLはオゾン耐性品種育成に有効に活用できる。
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背景・ねらい |
高濃度のオゾンは、イネの葉の障害、光合成効率の低下を引き起こす。中国などの問題地域の現在の大気中のオゾン濃度(50~70 ppb)によるイネの減収は5~10%とされているが、将来の東、東南アジアのイネ生産地帯でのオゾン濃度の上昇(100 ppb以上) に伴い、減収程度は20%に達すると予測されている。このレベルのイネの減収は食糧の安定供給を脅かすことになる。このような背景から、オゾン耐性に関するイネの遺伝的変異を明らかにし、耐性に関与する遺伝子座の同定を試みた。
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成果の内容・特徴 |
- インディカ、ジャポニカ、水稲、陸稲から構成される23品種を温室で栽培し、オゾン濃度100 ppbを14日にわたり、午前9時から午後4時まで処理した。対照区のオゾン濃度は20 ppb以下とした。
- オゾン処理に対する明瞭な品種間差異が見られ、Azucena、IR74では葉に強度の障害が現れ、日本晴、蜜陽23ではバイオマス量が低下したが(図1)、Kasalathはほとんど影響を受けなかった。
- 日本晴×Kasalathのマッピング集団を用いたQTL解析から、葉の褐変化にかかわる 4個の QTLとバイオマス量の低下に関する1個のQTLが検出された(表1)。
- 葉の褐変に関する4個のQTLのうち耐性親のKasalathからは9番染色体のOzT91個のみで、他の3個は感受性親の日本晴由来であった。 バイオマス低下に関するQTL (OzT8)はKasalath由来であった。
- 日本晴の遺伝的背景にKasalathの染色体断片が導入された染色体置換系統(SL)を用いて、検出されたQTL、OzT3、OzT8、OzT9の効果を調査したところ、OzT9のQTLにKasalath 断片が導入されたSL41では、褐変化は抑制されたが、OzT3領域がKasalathに置換したSL15では逆に褐変化が促進された(図2)。
- OzT8座にKasalathの断片が導入された系統(SL37)は日本晴に較べて乾物重の減少量が低かったが、これは日本晴での光合成能力の低下が大きいためである(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- イネ遺伝資源で見られたオゾン耐性の遺伝的変異はオゾン耐性イネ品種を育成するのに十分の範囲であることが明らかになった。
- 検出されたオゾン耐性に関与するQTLは耐性品種Kasalathから耐性遺伝子を導入する際に重要なツールとなる。
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図表1 |
214710-1.pdf |
図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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図表8 |
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図表9 |
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カテゴリ |
遺伝資源
水稲
品種
陸稲
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