ダイズの耐塩性を制御するQTLの同定

タイトル ダイズの耐塩性を制御するQTLの同定
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2011
研究担当者 Aladdin Hamwieh
許東河
発行年度 2008
要約 耐塩性簡易評価方法を開発し、広範囲のダイズ遺伝資源の耐塩性の検定により、栽培大豆(Glycine max)FT-Abyaraと野生ダイズ(G. soja)JWS156-1を耐塩性品種として選抜した。耐塩性のQTL解析の結果、栽培ダイズと野生ダイズにおいて同じ領域に効果の大きなQTLが検出され、両者が共通の耐塩性QTLを持つことが明らかになった。同定したQTLと連鎖するDNAマーカーはダイズの耐塩性育種に利用できる。
背景・ねらい
 塩害は世界のダイズ生産地帯、特に開発途上国の乾燥・半乾燥地域においてしばしば報告されている。また、地球温暖化に伴った降雨量不足および不良灌漑により塩類集積地が拡大しつつある。この問題への対応法として、耐塩性品種の育成が有力な手段である。しかし、耐塩性は遺伝的に複雑な形質とされ、育種現場での耐塩性の評価と選抜が必ずしも容易ではない。本研究では、耐塩性の評価に必要な簡易検定法を確立し、広範な栽培ダイズ(Glycine max)、および野生ダイズ(ツルマメ、G. soja)遺伝資源から耐塩性を示す遺伝資源を選抜する。さらに、耐塩性のQTL(量的形質遺伝子座)解析を行い、耐塩性育種に利用できるDNAマーカーを開発する。
成果の内容・特徴
  1. 耐塩性の簡易評価法を開発した。この方法ではダイズを栽培しているポットを放置した水槽に、塩水(150 mM NaCl)を入れ、水位をポット内培土の上面と同じ約15 cmに維持し、ポットの底面および側面にある小さな穴から塩水を浸透させる。塩水処理は第2本葉展開期から3~4週間行う。水槽内の塩水はポンプで常に循環させるため、植物に塩ストレスを均一に与え、かつ、根圏に酸素を供給することが可能となる。本評価法により大量のダイズ遺伝資源を評価することができ、その再現性も高い。この方法で選抜した耐塩性ダイズ系統は従来の水耕法でもその耐塩性が確認された。オゾン処理に対する明瞭な品種間差異が見られ、Azucena、IR74では葉に強度の障害が現れ、日本晴、蜜陽23ではバイオマス量が低下したが(図1)、Kasalathはほとんど影響を受けなかった。
  2. 耐塩性簡易評価方法を用いて600以上の栽培ダイズ品種と野生ダイズ系統を検定した結果、ブラジルの栽培大豆品種「FT-Abyara」と日本の野生ダイズ系統「JWS156-1」が高い耐塩性を示した。
  3. 耐塩性栽培大豆品種「FT-Abyara」と塩感受性品種「C01」の組み換え固定系統(RIL集団)96系統(F7)を用いて連鎖地図を構築した。RIL分離集団の耐塩性の評価では、前述の評価法を用いた(図1)。塩水処理は第2本葉展開期から3~4週間行う。QTL解析の結果、耐塩性に関する効果の大きなQTL(寄与率44%)が連鎖群Nに検出され、耐塩性遺伝子はダイズN連鎖群でSSR DNAマーカーのSat_304-Satt237間(約7cM)に座上すると推定される(図3)。
  4. 野生種由来の耐塩性QTL解析では、塩感受性栽培大豆品種「Jackson」と選抜された耐塩性野生大豆資源「JWS156-1」の交雑に由来するF2世代分離集団の225個体を供試した。耐塩性の評価法は、120 mMのNaClを含む水耕液で約3週間生育させた(図2)。効果の大きい耐塩性QTL(寄与率68.7%)が検出された(図2)。このQTLにおいて、耐塩性の対立遺伝子は野生ダイズに由来し、塩感受性対立遺伝子に対して不完全優性を示した。野生種由来耐塩性QTLは、栽培大豆FT-Abyaraで検出されたQTLと同じ領域に位置し、野生大豆資源と栽培大豆が共通の耐塩性QTLを持つことが明らかになった。

成果の活用面・留意点
  1. 本研究で同定されたQTLと連鎖するSSRマーカーSat_304、Sat_091、Satt237などはダイズの耐塩性DNAマーカー育種に利用できる。
  2. さらに効率的な耐塩性育種を行うためには、耐塩性遺伝子とさらに緊密に連鎖するマーカー、あるいは耐塩性遺伝子内部のDNAマーカーを獲得する必要がある。

図表1 214711-1.pdf
図表2 214711-10.gif
図表3 214711-2.gif
図表4 214711-3.gif
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図表6 214711-5.gif
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図表8 214711-7.gif
図表9 214711-8.gif
図表10 214711-9.gif
カテゴリ 育種 遺伝資源 簡易検定法 乾燥 大豆 DNAマーカー 評価法 品種

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