タイトル |
東北タイの塩類集積地域における持続的地下水利用可能量マップ |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
Kriengsak Srisuk
Nongluck Suphanchaimat(コンケン大学)
Prayuth Senchai
Somsak Sukchan(タイ土地開発局)
濱田浩正
|
発行年度 |
2008 |
要約 |
東北タイのBan Phai流域を例として、地下水流動モデル構築のための調査を実施し、分布型地下水流動シミュレーションにより持続的な地下水利用可能量マップを作成した。
|
背景・ねらい |
東北タイの農業生産の主要な律速因子である水不足問題を緩和する方法の一つに地下水利用の促進がある。本研究では、コンケン県のノンセン村を中心とした流域を対象として、農業利用についての指針作りに寄与することを目的として、地下水位や水質の測定を実施するとともに、分布型地下水流動モデルで地下水の持続的な利用可能量マップを作成する。
|
成果の内容・特徴 |
- 試験地として、東北タイ・コンケン県のノンセン村が位置するBan Phai流域を選定した。流域の東側は標高が高く、西に向かうに着いて低くなっている。調査は、(1)土壌、地形、地質、土地利用などの情報収集と現地踏査、(2)既存のボーリング孔と新たに設置したボーリング孔での地下水位や水質の測定、(3)分布型地下水流動モデルを用いた地下水の持続的な利用可能量算出の手順で実施する。
- 地下水の主な供給源は台地部で浸透した降水で、広域の地下水流動は東から西に向かう流れである。地下水の流出域である西部には、全溶存成分(TDS: Total Dissolved Solid)の値が2000 mg/Lを超える塩類集積地が存在している。この地域の地下水利用は、雨季の水田の補給かんがいや洗浄水などに限られ、塩類を集積させないため排水を十分にする必要がある(図1)。
- 分布型地下水流動モデルを用いることによって、流域全体の地下水かん養量は約1.82×105 m3(2006年10月~2007年8月)と算出できる。
- 地下水の持続的な利用可能量を、地下水のTDSの値が2000 mg/L以下で、今後10年間の地下水位低下が5mを超えない最大揚水量と定義することによって算出できる。対象とする流域、持続的な地下水利用可能量が、0-100、101-500、501-1000、1001-1500 m3/d/km2と4つの地域に分類、それぞれの面積は、108、118、87、24 km2である。(図2)。
- チー川近傍の農地に井戸(34m深)を掘削することによって、1月から4月の乾季に作物栽培が実現できる(図2の試験井掘削地点)。
- 流域の中央部には、持続的な地下水利用可能量が500 m3/day/km2を超える地域が存在している。これらの地域では、地下水は雨季の稲作の補助水源、乾季の作物栽培、生活用水の水源として有望である。
|
成果の活用面・留意点 |
- 本研究の手順に従えば、他の地区でも同様の情報が得られ、東北タイでの地下水利用の普及に貢献するものと期待される。
- 分布型地下水流動シミュレーションの計算には、差分モデルソフト(MODFLOW)を用いた。
- 塩類集積地における地下水へのTDSの供給源は、地下約100m深に存在する岩塩層を通過して地表面付近まで上昇した地下水と推定されているが、詳細なメカニズムの解明は今後の課題である。
|
図表1 |
214719-1.pdf |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
図表4 |
 |
図表5 |
 |
図表6 |
 |
カテゴリ |
水田
|