早生樹と組み合わせた効率的な郷土樹種の育成

タイトル 早生樹と組み合わせた効率的な郷土樹種の育成
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2011
研究担当者 Thiti Visaratana
Tosporn Vacharangkura(タイ王室林野局)
酒井敦
発行年度 2008
要約 郷土樹種Hopea odrataはタガヤサン(Senna siamea)と組み合わせて植栽することで生存率・成長量ともに最も高くなり、効率的に育成することができる。早生樹とHopea成長はトレード・オフの関係であり、ユーカリやアカシアのような特に成長の早い早生樹でも適切な間伐を行い十分な光環境を確保すれば、Hopea を十分に育成できる。
背景・ねらい
 タイの森林面積は国土面積の約33%(1,680万ha)であり、タイ政府は今後10年間でそれを40%まで回復させることを目指している。荒廃草地の緑化には早生樹が適しており、造林技術も確立されている。一方で、多様な利用価値がある郷土樹種は資源量が減少しているが、これを育成する技術は確立されていない。郷土樹種を育成する手法として、早生樹林の中に郷土樹種の苗を植栽し、早生樹を間伐(抜き切り)しながら郷土樹種を育成する「複層林施業」がある。本課題では、タイ東北部のサケラートにおいて過去に設置された複層林試験地を復元し、早生樹と郷土樹種の成長解析を通して育成方法を開発する。
成果の内容・特徴

  1. 当試験地では、1987年に3種の早生樹が4通りの植栽密度で植えられ、3年後にフタバガキ科の郷土樹種Hopea odorata(以下Hopea とする)が4 m×4 mで植栽された。1994年には一部の区画で本数当たり50%の間伐が行われた。2007年に再調査を行い、過去のデータを合わせ解析した。
  2. ユーカリ(Eucalyptus camaldulensis)とアカシア(Acacia auriculiformis)は材積成長量が8.8~11.3 m3/ha/年と比較的成長が早く、タガヤサン(Senna siamea)は同1.0~1.3 m3/ha/年と遅い特性がある。
  3. ユーカリやアカシアの樹下に植栽したHopea は最初の数年間は高い生存率を維持し(図1)、早生樹による保護効果が見られるが、その後被陰され、生存率は低下する。一方、タガヤサンの樹下に植栽したHopea は初期死亡率が高いが、その後は死亡する個体は少なく高い生存率を維持する。
  4. Hopea はタガヤサンの樹下に植栽した区画で成長が良く、特に植栽間隔2 m×8 mで植えて間伐を行った区画では最大の成長量を示し、Hopea を単独で植栽した区画より成長量が大きくなる(図2)。
  5. ユーカリやアカシアの間伐区では、無間伐区に比べHopea成長が促進され(図3)、十分な光環境を確保すれば、樹下植栽によりHopea を十分に育成できる。
  6. 早生樹とHopea成長には明瞭な負の相関が見られる(図4)。すなわち、早生樹とHopea成長はトレード・オフの関係にあり、早生樹を間伐し量を減らせばHopea成長を維持できる。
  7. Hopea は早生樹と組み合わせて植えることで、生存率と生産性をあげることが可能である。同時に、早生樹を定期的に収穫することにより、郷土樹種が成長するまでの期間、造林者は現金収入を得られる。

成果の活用面・留意点
  1. 早生樹林を郷土樹種Hopea との混交林、またはHopea純林へ導くための技術として活用できる。
  2. アカシアやユーカリと組み合わせる場合では、間伐強度を強めるか回数を増やし早生樹の胸高断面積を低く(5 m2/ha程度)抑えることが、樹下植栽したHopea成長を維持するために必要である。
  3. 試験地のHopea 林では雨期になると、Hopea と共生する食用キノコが発生する。このキノコは周辺住民の食料や、現金収入手段として非常に貴重な資源である。その他にも樹脂の利用などフタバガキ科の郷土樹種を植栽することによって得られる付加価値は大きい。

図表1 214727-1.pdf
図表2 214727-2.gif
図表3 214727-3.gif
図表4 214727-4.gif
図表5 214727-5.gif
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図表9 214727-9.gif
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