初期生活史特性に基づくラオス在来テナガエビMacrobrachium yuiの種苗生産技術

タイトル 初期生活史特性に基づくラオス在来テナガエビMacrobrachium yuiの種苗生産技術
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 伊藤 明
Oulaytham Lasasimma
Pany Souliyamath
発行年度 2008
要約 ラオス北部に生息し、零細農民の貴重な現金収入源である陸封型テナガエビM. yuiの種苗生産技術を開発した。本種は両側回遊型テナガエビ同様、浮遊幼生期を有し、孵化から浮遊幼生期まで洞窟河川内で過ごす。浮遊幼生を3.5pptに調整した人工海水で飼育することにより、その多くを着底に至るまで成長させ、さらに着底後、直ちに淡水飼育に切り替えることで飼育可能である。
キーワード M. yui、種苗生産技術、両側回遊型、3.5ppt、人工海水、着底後,直ちに淡水飼育に切り替える
背景・ねらい ラオス北部を流れるメコン川支流に生息するテナガエビMacrobrachium yuiは、高値で取引され、流域の零細農民の主要な現金収入源となっている。ところが近年、テナガエビの漁獲量が落ち込み、現金収入が減少している。このため、資源保全策の一つとして種苗放流や養殖生産による人工的な増殖手法が期待されている。しかし、これまでラオス国内におけるM. yuiの種苗生産は成功しておらず、その生物学・生態学的特性もほとんど明らかにされていない。本種の成体は、本流から洞窟河川に遡上する性質を持つことから、幼生期にも特異的な性質が存在し、それが種苗生産技術開発の鍵となる。そこで、野外及び飼育下で生活史の特性を把握しながら種苗生産試験を行った。
成果の内容・特徴
  1. 採集したテナガエビM. yuiをオスとメスを隔離して飼育しても受精卵を得ることができることから、交尾は採集時にすでに行われていると考えられる。そのため、メスだけを選別して種苗生産試験用に供する。
  2. 採集したメスエビの抱卵は飼育下では周年行われるが、抱卵割合が最も高くなるのは6月~7月・11月~12月の年2回である。
  3. M. yuiの一腹卵数及び卵の大きさは、他の陸封型テナガエビに近似する(図1)。しかし、その発生様式は両側回遊種と同様で、直達発生せずに浮遊期を経て変態後、親エビと類似した形態となる(図2上下)。
  4. 浮遊期を過ごす洞窟河川水の電気伝導度は高く、わずかながら塩分を含む。また、両側回遊型テナガエビの中で、本種と同様ゾエア期の短い種では10ppt前後の塩分濃度で幼生が成育することから、塩分濃度10.5、3.5、1.7、0.0pptの4条件で本種の幼生飼育実験を行うと、着底までの生存率は3.5 pptの塩分濃度で安定して高い(図3)。
  5. 着底した幼生を3.5pptの塩分濃度で継続飼育すると生存率が低下するが、着底後、直ちに飼育水を淡水に交換して飼育すると、高い生存率を維持し続け、幼生期を経て稚エビにまで成長する(図2下、図4)。
成果の活用面・留意点
  1. 現地では、インフラ整備が遅れているため、集約的な完全養殖は現段階では不向きである。また、粗放的完全養殖については、養殖の場となる水域の生態系構造を考慮した上で、その可否を判断すべきである。
  2. ここで開発された技術は種苗放流事業への利用が考えられる。但し、種苗放流によるM. yuiの天然個体群への影響を評価した上で行われるべきである。また、どの成長段階で放流するのが効果的であるかはM. yuiの生物学的・生態学的特性に基づいて検討する必要がある。
  3. 抱卵期中に受精卵が親エビから脱落してしまう現象がしばしば観察されている。1腹からできるだけ多くの幼生を得るためには、今後、親エビ管理手法の検討も重要になる。
図表1 214728-1.pdf
図表2 214728-10.gif
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図表14 214728-9.gif
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