アルファルファ菌核病(Sclerotinia trifoliorum)の抵抗系統育成とその遺伝率

タイトル アルファルファ菌核病(Sclerotinia trifoliorum)の抵抗系統育成とその遺伝率
担当機関 愛知県農業総合試験場
研究期間 1990
研究担当者
発行年度 1997
要約 菌核病抵抗性について表現型循環選抜を実施した。9世代選抜系統(SR58-9)は高い抵抗性示すことが明らかになった。3世代から9世代にかけての実現遺伝率はh2=0.36であった。F1,F2集団から推定した遺伝率も同程度でやや低いことから、抵抗性の遺伝はポリジーンによると推察される。
背景・ねらい アルファルファ草地では晩秋から春にかけて茎葉を腐敗させる菌核病の発病が北海道から九州の各地でみられ衰退の原因となる。菌核病抵抗性については表現型循環選抜によって抵抗性系統を育成してきた。しかし、抵抗性選抜系統は耐湿性、アブラムシ抵抗性が劣るなどの欠点を持つので、これらの諸障害にも強い複合抵抗性系統を育成する必要がある。このための育種法を検討するため、菌核病抵抗性の遺伝性を明らかにする。
成果の内容・特徴 菌核病抵抗性について愛知菌株を用いて9世代の表現型循環選抜を圃場で実施し、選抜効果を検定した。また、選抜5世代系統(SR58-5)と既存品種(ナツワカバ、タチワカバ、du Puits)との交雑を行い、F1、F2集団から抵抗性の遺伝率を推定した。
  1. 各選抜世代の抵抗性は1、2世代では低かったが、3世代目以降向上し、選抜9世代系統(SR58-9)は高い抵抗性を示した。この間の選抜による実現遺伝率は h2=0.36である(図1)。
  2. 既存品種の生存率はナツワカバ5%、タチワカバ10%、du Puits8%と低かったが、SR58-5は53%の高い生存率を示した(図2)。
  3. 各交配グループともF1系統の生存率は親品種に比べ明らかに高く、抵抗性の向上が認められたが、抵抗性程度は両親の平均値より低くなった。F2の生存率はF1よりさらに5%程度低く、無選抜で世代を重ねることによって抵抗性が低下する傾向が認められる(図2)。
  4. F1系統とF2系統の生存率にはr=0.696**の有意な相関関係があり、F2のF1に対する回帰から菌核病抵抗性の遺伝率はh2=0.32と推定される(図3)。
  5. これらのことから、菌核病抵抗性の遺伝率はやや低く、働きの小さな複数の遺伝子(ポリジーン)に支配されると考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. SR58系統は菌核病抵抗性品種育成に有効であるが、抵抗性の遺伝力がやや低いので、複合抵抗性系統の育成では本抵抗性系統を主母材として、バッククロス等により他の有用形質を導入する事が望ましい。
  2. 本系統は寒冷地の菌株に対しても抵抗性を示すが、耐寒性が低いので、寒冷地向き母材とする場合には留意する。本抵抗性系統は研究用、公的育種用として分譲可能。
図表1 215426-1.gif
図表2 215426-2.gif
図表3 215426-3.gif
カテゴリ アルファルファ 育種 耐寒性 耐湿性 抵抗性 抵抗性品種 品種

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