タイトル |
個体識別した屠殺牛卵巣を用いた体外受精胚の生産 |
担当機関 |
静岡県畜産試験場 |
研究期間 |
1999~1999 |
研究担当者 |
|
発行年度 |
1999 |
要約 |
未成熟卵子の成熟培養を行う際、卵子10個あたりの培地量を75μlとすることにより、個体識別した優秀な牛の屠殺卵巣から受胎可能な体外受精胚が効率的に作出できる。
|
背景・ねらい |
牛の体外受精技術は肉用素牛生産技術の一つとして実用化されてきているが,近年,血統や枝肉成績等から優秀な個体を識別し,体外受精胚を作出する方法が用いられるようになってきている。しかし,個体別に実施した体外受精では,培養卵子数が少なく,胚盤胞への発生率が低いことが報告されている。そこで,個体識別した牛の卵巣から回収した卵子を用いて体外受精を行い,回収卵子数と胚盤胞への発生率を比較するとともに,少数卵子の培養に適した培養法を確立するため,成熟培養時の培地量について検討を加えた。
|
成果の内容・特徴 |
屠殺した黒毛和種の卵巣から小卵胞切開法を用いて回収した卵子を供試した。成熟培養は7mM Taurine,5mM Hypotaurine,5%CS加199培地を用い,38.5℃で22時間行った。黒毛和種の凍結精液を用いて5時間媒精(媒精日=1)を行った後,媒精終了後48時間目に卵丘細胞を剥離し,分割状況を検査した。発生培養は成熟培地と同一培地を用い,9日目まで行い,発生した胚盤胞数を検査した。なお,培養条件は38.5℃,3%CO2in air,飽和湿度とした。
- 卵巣からの回収卵子数が10個未満の個体からは,体外受精胚を生産することはできなかったが,10個以上得られた個体(15頭)の内,1頭を除き14頭から体外受精胚を生産することができた。回収卵子数が10~19個の個体および20~25個の個体の胚盤胞への発生数は,それぞれ平均3.6個および4.1個であった(表1)。
- 個体識別した6頭から得られた体外受精胚(8日目)28個を凍結保存・融解後,受胚牛に移植したところ10頭が受胎(胎膜触知法)した。なお,体外受精を実施した6頭の個体毎の受胎率は20~100%であり,いずれの個体からも1頭以上の受胎例が得られた(表2)。
- 成熟培養を行う際、卵子10個あたりの培地量を75μlとした場合,胚盤胞への発生率は33.8%で,50,100,125μlのいずれの場合よりも有意に高かった(表3)。
|
成果の活用面・留意点 |
- 優良な遺伝形質をもった肉用牛,乳用牛を屠殺する際に体外受精胚を作出し,これを受胚牛に移植して子牛を生産する。
- 経膣採卵後の体外受精技術に活用する。
- 培養卵子数に最適な培地量は,培地の種類,炭酸ガス濃度,培養時間等の条件によって異なる可能性がある。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
カテゴリ |
肉牛
|