タイトル |
水稲病害抵抗性付与のための連続戻し交雑育種におけるDNAマーカー選抜の有効性の実証 |
担当機関 |
愛知県農業総合試験場 |
研究期間 |
1998~2000 |
研究担当者 |
|
発行年度 |
2000 |
要約 |
イネ縞葉枯病抵抗性遺伝子(Stvb-i)及び穂いもち圃場抵抗性遺伝子(Pb1)の有無を判定できるPCRマーカ-ST10及びB1を連続戻し交雑に適用した結果、両抵抗性を付与したコシヒカリ同質遺伝子系統を効率的に作出できた。このことで、実用育種分野におけるマーカー選抜育種の有効性を実証した。
|
背景・ねらい |
インド型水稲品種Modanに由来するイネ縞葉枯病抵抗性遺伝子Stvb-iと穂いもち高度圃場抵抗性遺伝子Pb1は、第11染色体上で連鎖関係にある。愛知農総試及び北海道農試では、共同研究によりStvb-iの有無を判定できるPCRマーカ-ST10及びPb1の有無が判定できるRFLPマーカ-S723、PCRマーカ-B1、B2、CAPSマーカ-B4を開発した。従来からのイネ縞葉枯病及び穂いもち抵抗性を導入するための連続戻し交雑では、穂いもち抵抗性の生物検定が出穂後の判定で、BnF1による連続戻し交雑には使えないため、両遺伝子の連鎖関係を頼りに、幼苗検定の確立しているイネ縞葉枯病抵抗性のみの検定により実施してきたが、結果的に穂いもち抵抗性を欠落させることが多かった。そこで、これらDNAマーカーが開発されたのを機に、実用育種への適用を試みた。
|
成果の内容・特徴 |
- イネ縞葉枯病抵抗性遺伝子(Stvb-i)及び穂いもち抵抗性遺伝子(Pb1)の有無を判定できるPCRマーカ-ST10及びB1を、コシヒカリ同質遺伝子系統作出のための連続戻し交雑に適用した。
- 抵抗性母材選定時にイネ縞葉枯病抵抗性をST10と生物検定の両方で確認した結果、両者の 結果はよく一致した(図1)。
- B1と同じPb1座を検出するCAPSマーカ-B4により、戻し交雑終了後のF2系統を判定した結果も、穂いもち抵抗性の生物検定とほぼ一致した(図2)。
- DNAマーカーを利用することにより穂いもち抵抗性を目的とする場合でも、気象の影響を受けず精度が高く、BnF1による連続戻し交雑が可能となり、温室栽培により年3回の戻し交配が可能であった(図3)。また、同一手法で複数の抵抗性の判定が可能であり、育種の効率化に有効であることが確認できた。
- ヘテロが検出できるCAPSマーカ-B4を戻し交雑終了後の選抜に利用することで抵抗性の早期固定を図ることができた。
- この連続戻し交雑で作出したコシヒカリの同質遺伝子系統「愛知106号」は生育・収量・品質・食味・諸特性がコシヒカリと類似しており、この育成によってマーカー選抜育種の有効性が実証された(表1)。
|
成果の活用面・留意点 |
- DNAマーカーによる抵抗性の判定は間接的なものなので、育成の最終段階には生物検定により確認する必要がある。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
図表4 |
|
カテゴリ |
育種
縞葉枯病
水稲
DNAマーカー
抵抗性
抵抗性遺伝子
病害抵抗性
品種
良食味
|