タイトル | 高泌乳牛へのルーメンバイパスメチオニン製剤給与の効果 |
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担当機関 | 茨城畜セ |
研究期間 | 1997~1998 |
研究担当者 |
宇田三男 足立憲隆(畜草研) 楠原徹 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 高泌乳牛の飼料(泌乳期CP14.6%)に保護メチオニン(67%製剤:ルーメンバイパス率70%)を20g添加することにより乳量、乳成分量の向上がみられた。なお、繁殖成績及び疾病発生状況等に及ぼす添加の影響はみられない。 |
背景・ねらい | 現在、乳成分の中で特に蛋白質を高める飼養法の確立が求められているが、同時に環境負荷低減の観点から、窒素排泄量の抑制との両立が重要である。また、乳生産が向上する一方で繁殖成績の低下や疾病発生率の増加も問題となっている。 そこで、産乳成績と繁殖性を高く保つ飼料給与法の確立を目的として、泌乳初期に不足しがちなアミノ酸で抗脂肪肝因子でもあるメチオニンをルーメンバイパス製剤として給与し、乳量、乳成分及び繁殖性に及ぼす影響について検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 保護メチオニンの給与が、乳牛の産乳性と繁殖性に及ぼす影響について、全国10場所でのべ82頭(2年間)の経産牛を用いて試験を実施した。試験期間は分娩前4週から分娩後14週までとした。飼料としてはチモシー乾草(総乾物給与量に対し、分娩前:45.5% 分娩後:24.5%)、ヘイキューブ(総乾物給与量に対し、分娩前:24.5% 分娩後:14.0%)と指定配合飼料(総乾物給与量に対し、分娩前:30.0% 分娩後:60.0%)のTMR(表1)を用い、メチオニン区はDLメチオニン67%製剤を、分娩前4週から分娩後14週の試験期間を通して1日20g飼料に添加した。 2. 飼料中CP含有量が分娩前後においてそれぞれ15.3%および16.0%と高い場合には、乳量、乳成分に及ぼすメチオニン添加の効果は有意ではない。(表2) 3. 飼料中CP含有量が分娩前後においてそれぞれ12.6%および14.6%程度の場合には、メチオニン添加により乳量および乳蛋白質量が有意に増加する。また、低蛋白飼料給与時には窒素排泄量が標準蛋白飼料給与時に比べて20%程度減少する。(表2) 4. 低蛋白質飼料給与時において、保護メチオニン製剤の添加で血中メチオニン濃度に有 意差が認められるが(分娩後3週目:メチオニン区3.81±0.14umol/dl、無添加区3.37± 0.16umol/dl、P<0.05)、血中リジン濃度に差は認められない。 5. 一般血液成分とルーメン液成分に差はない。 6. 繁殖成績と疾病発生状況は両区に差はない。(表3) 以上のことから、保護メチオニンを飼料に添加し、飼料中のアミノ酸バランスを改善 することにより、泌乳初期の高泌乳を維持しつつ、飼料中蛋白質含量を14.6%程度まで低 減し、また、同時に窒素排泄量の低減を実現できる。 |
成果の活用面・留意点 | 保護メチオニン製剤の添加が効果を発揮するのは、メチオニンが制限アミノ酸(不足している状況)になっている場合である。よって、飼料中の蛋白質含量が16%以上のような高い場合には、保護メチオニンの添加効果が期待できないが、エネルギー水準に比べ蛋白質含量が低い場合等、メチオニンが制限アミノ酸になりやすい飼料構成で使用すると効果的である。なお、商品は数社で販売されている。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 環境負荷低減 乳牛 繁殖性改善 |