タイトル | ウシの栄養膜小胞の受胎率向上効果 |
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担当機関 | 茨城畜セ |
研究期間 | 1999~2003 |
研究担当者 |
浦田博文(奈良県畜産試験場) 横田昌巳 宮地利江(福井県畜産試験場) 橋谷田豊(家畜改良センター) 小財千明 菅原徹(茨城県畜産センター) 谷口雅律(熊本県農業研究センター畜産研究所) 渡辺晃行 藤井満貴 藤井陽一(山口県畜産試験場) |
発行年度 | 2003 |
要約 | ウシの栄養膜小胞(Trophoblastic vesicle、TBV)は、子宮内に注入すると黄体退行抑制作用があり、受精卵移植において胚と共移植することで受胎率を向上させる可能性がある。また、TBVは授精後16日目の回収で効率よく作出でき、凍結保存が可能である。 |
キーワード | 栄養膜小胞、共移植、受胎率、インターフェロンτ |
背景・ねらい | ウシの受精卵移植による受胎率は50%前後で推移しており、受胎率向上が大きな課題となっている。近年、着床期胚の栄養膜細胞(Trophoblast)が産生するインターフェロンτが妊娠維持に重要な役割を果たしている可能性や、その栄養膜細胞を細切し、短時間培養後に形成される栄養膜小胞(Trophoblastic vesicle、以下TBV)を胚と共移植することによる受胎率向上の可能性が報告されている。 そこで、本研究ではTBVの受胎率向上効果を明らかにするため、TBVの作出方法、TBVの凍結保存法、TBVの子宮内注入が黄体機能に及ぼす影響、および胚との共移植が受胎率に及ぼす影響について検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. TBVの効率的作出方法の確立 TBVを効率的に作出するためには長く伸長した胚を多く得ることが必要なため、過剰排卵処理+人工授精の後回収する方法と、体外受精胚の移植後回収する方法を比較検討 した。その結果、過剰排卵処理による生体内由来胚区の16日目の回収が最も効率的に作 出できることが示された(1頭あたり57.4個、表1)。 2. TBVの凍結、融解方法の確立 TBVの凍結技術を確立するために、耐凍剤および糖の添加効果について検討した。その結果、1.8MのEG(エチレングリコール)のダイレクト法が有効であると考えられた。その際に添加する糖は、培養後24時間では0.2MのTre(トレハロース)が0.1MのTreやSuc(スークロース)に比較して生存率が高かったが、糖添加による生存率向上効果は明らかではなかった(表2)。 3. TBVの子宮内注入の黄体退行抑制効果 TBVの黄体機能への影響を明らかにするため、発情後7日目に3個のTBVを子宮内に注入し、血中プロジェステロン値の推移を測定した。その結果、発情回帰日数は対照区が21.9±1.4日、試験区が23.7±3.2日でやや黄体退行抑制効果がみられた。 4. TBVの共移植が受胎率に及ぼす影響 凍結胚をもちいた177頭の受胚牛へのTBV(3個)共移植の結果、試験区で受胎率が55.6%、対照区が42.7%と共移植により受胎率が向上(P=0.12)する傾向が認められた(表3)。 以上の結果から、TBVを胚と共移植することが受胎率の改善に利用可能であることが示唆された。 |
成果の活用面・留意点 | 1. TBVが凍結保存可能なため、現在の凍結胚中心の受精卵移植システムに容易に適用できるが、病原体の汚染に注意が必要である。 2. 生産現場で本技術を利用するためには、TBVをストロー内に胚と共に封入する必要がある。したがって、TBVの安定作出と確実に子宮内へ注入できる封入技術が求められる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 受精卵移植 受胎率向上 |