タイトル | ウシ栄養膜小胞は発情周期を延長させ胚と共移植すると受胎率が向上する |
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担当機関 | 福井畜試 |
研究期間 | 1999~2004 |
研究担当者 |
宮地利江(福井畜試) 渡辺晃行(茨城畜セ) 谷口雅律(熊本畜研) 藤井陽一(山口畜試) 浦田博文(奈良畜試) 橋谷田豊(家畜改良セ) |
発行年度 | 2004 |
要約 | ウシ栄養膜小胞を子宮内に注入すると、発情回帰が遅延し、血中プロジェステロン濃度が発情後25日目まで平均で1ng/mlを維持して黄体退行抑制が推察された。また、胚との共移植では、受胎率が50%以上になり向上効果が期待できる。 |
キーワード | 栄養膜小胞、共移植、受胎率、血中プロジェステロン濃度、ウシ |
背景・ねらい | ウシの受精卵移植の普及定着には、受胎率を50%以上に向上させることが課題であり、受卵牛の選定・受精卵の品質・移植操作の面からさまざまな検討がなされている。最近、胎盤へと分化する栄養膜細胞が産生するインターフェロンτが妊娠維持に重要な役割を果たすことに注目し、子宮灌流により採取した胚より栄養膜を細切し培養後に形成される栄養膜小胞(Trophoblastic vesicle、以下TBV)と胚の共移植によって受胎率が向上するとの報告がある。 そこで、TBVの子宮内注入による黄体機能への影響を明らかにするため、発情回帰の状況と黄体長径および血中プロジェステロン濃度の動向、さらに胚との共移植による受胎率の向上効果について検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 発情回帰の状況 同一供試牛を用いて、発情後7日目に黄体側子宮角へ緩衝液(PBS)を注入する方法とTBV3個を注入する方法における発情回帰を比較した。TBV3個を注入した場合、発情 周期が1から7日間延長する個体が11頭中6頭で確認された(表1)。 2. 黄体長径および血中プロジェステロン濃度の動向 同時に、黄体長径および血中プロジェステロン濃度の推移を比較した。血中プロジェステロン濃度は、PBS注入では通常の発情周期に応じた推移を示した。一方、TBV3個注 入では発情後25日目まで平均で1ng/mlを維持し、黄体退行抑制が推察された(図1)。 黄体長径の推移には差がなく、また黄体長径と血中プロジェステロン濃度との相関も みられなかった(図2)。 3. TBV・胚の共移植による受胎率向上 TBV3個・胚1個を、1.8Mのエチレングリコール(EG)を耐凍剤として用いたダイレクト法によって、凍結融解後に共移植した。また、この時、保存溶媒への0.1Mのトレハロース(Tre)の添加と無添加についても比較検討した。その結果、いずれも、受胎率は50%以上と高くTBVと共培養しない胚1個移植に比べて良好な成績であった。特に0.1MTre無添加の共移植では、68.8%と高い受胎率が得られた(表2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. TBV・胚のダイレクト法による共移植によって、受胎率が向上する一定の効果が認められた。この手法は、 野外応用の可能性が高く、受胚牛へのホルモン投与法との併用効果も期待できる。 2. 実用化のためには、TBV・胚の同一ストロー内での凍結保存法の改善・簡易化が必要であり、ガラス化法などの検討が求められる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 受精卵移植 受胎率向上 |