タイトル | ガラス繊維濾紙を利用した植物からの迅速・簡便・低コストなDNA抽出法 |
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担当機関 | 岐阜生物産技研 |
研究期間 | 2003~2005 |
研究担当者 |
村元靖典 沢野定憲 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 抗酸化物質を含ませたガラス繊維濾紙を用いることにより、迅速・簡便かつ低コストで植物からDNAを抽出することができ、濾紙に吸着させたDNAは常温乾燥状態で長期保存することができる。 |
キーワード | DNA抽出、ガラス繊維濾紙、遺伝子診断 |
背景・ねらい | 植物ウイルスの遺伝子診断、遺伝子組換え植物の検出、増幅DNA多型(RAPD)解析による品種識別など、PCRを利用した検定作業において、特に多検体を扱う場合はサンプルからのDNA抽出操作が煩雑となり、一連の作業の律速段階となる。また、植物にはポリフェノールや多糖類など、PCR反応やDNA抽出そのものを阻害する物質も多量に含まれているため、その精製度も問題となる。 DNAがSiO2を主成分とする担体に結合しやすいことはよく知られている。本研究では、この原理を利用して、栽培圃場でのサンプリングからDNA抽出・保存までの操作を迅速・簡便かつ低コストで行うための技術を開発する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 亜硫酸ナトリウム等の抗酸化物質を含ませたガラス繊維濾紙(Filter Paper GA-55 ; ADVANTEC社)に、5mm x 5mmの大きさの植物葉切片を直接押しつけてDNAを含む組織液を吸着させ、(1)グアニジン塩酸などのカオトロピック塩(溶液中の水和分子の構造を壊して疎水結合を弱める働きがある)を含む緩衝液による固定、(2)アルコールを含む高塩濃度の緩衝液による洗浄、(3)低塩濃度の緩衝液による溶出の3ステップの方法(図1)によって、PCRに用いるに充分量のDNAを30分間以内で単離することができる。また、1サンプルあたりに用いる遠心チューブも1本でよいため、試薬等も合わせてコストは1サンプルあたり10円未満である。 2. ガラス繊維濾紙に吸着させた組織液を、常温乾燥状態で少なくとも1ヶ月間の長期で保存した後、DNA抽出操作を行ったサンプルでもPCR反応に用いることができる(図2)。このとき、抗酸化剤である亜硫酸ナトリウムの濃度が高いほど、保存の効果は大きい。 3. 抽出したDNAは10kbp以上のlong PCRにも用いることができる(図3)。また、ガラス繊維濾紙に組織液を吸着させ、常温乾燥状態で1ヶ月放置した後、DNA抽出操作を行ったサンプルでも同領域を増幅することができる。 4. ウイルスに感染した小切片の植物葉から、微量のウイルスの遺伝子を増幅することができるため、病害診断等の検定業務に用いるのに適している(図4)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 抗酸化物質としては、亜硫酸ナトリウムのほか、亜硫酸カルシウム等の亜硫酸塩も同様の効果があるが、扱い易さ等を考慮して、亜硫酸ナトリウムを10%で用いる。 2. サンプル同士の汚染を防ぐため、濾紙とサンプルを重ねたものをラップフィルムで包み、組織液を吸着させる。 3. トマトの他、シロイヌナズナ、イネ、タバコ、バラなどでも用いることができる。 4. 混入する不純物を最小限にするため、サンプルはなるべく若い葉を用いたほうがよい。 5. PCRに用いるサンプル液量は、40μlの系に2μlで充分であるが、long PCRは一般的に充分量の鋳型DNAが必要なため、エタノール沈殿等で濃縮する必要がある。 6. 本技術を実施するにあたっては、岐阜県との特許実施許諾契約を締結する必要がある。(窓口;岐阜県生物産業技術研究所・先端育種分野) |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 育種 乾燥 コスト 植物ウイルス たばこ 低コスト トマト ばら 品種 |