タイトル | β-カロテン含量低減稲発酵粗飼料の黒毛和種去勢牛への肥育全期間給与 |
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担当機関 | 富山畜試 |
研究期間 | 2003~2005 |
研究担当者 |
高平寧子 吉野英治 紺博昭 金谷千津子 丸山富美子 |
発行年度 | 2005 |
要約 | 黒毛和種去勢牛24ヶ月齢肥育(8~24ヶ月齢)における稲発酵粗飼料の肥育全期間給与は粗飼料の採食量を高める。また、乾草、稲ワラ給与時と比較しても増体および枝肉成績について差はないため、肥育全期間の給与粗飼料として利用できる。 |
キーワード | 稲発酵粗飼料、β-カロテン、肉用牛、黒毛和種去勢牛、24ヶ月齢肥育 |
背景・ねらい | 飼料自給率向上と水田の高度利用を推進するため、飼料イネの作付が全国的に増加しつつあるが、肥育牛では、飼料イネに含まれるβ-カロテン含量が、一般に給与する稲ワラに比べ高いため、脂肪交雑や脂肪色などへ与える影響が懸念されている。 そこで、黒毛和種去勢牛24ヶ月齢肥育において、肉用牛向けに調製されたβ-カロテン含量の低い稲発酵粗飼料(イネWCS)を給与し、増体、採食量、血中各種ビタミン濃度、枝肉成績等から肥育全期間(8~24ヶ月齢)におけるイネWCSの給与効果について検討を行う。 |
成果の内容・特徴 | 1. 対照区(肥育前期[8~13ヶ月齢]に乾草、肥育後期[14~24ヶ月齢]に稲ワラを給与)、前期WCS区(肥育前期にイネWCS、肥育後期に稲ワラを給与)および全期間WCS区(肥育全期間にイネWCSを給与)の3区について比較を行った。肥育全期間の日増体量は各区とも0.8kg以上で差はなく、発育は良好である(表1)。 2. 給与したイネWCSの品種は「クサユタカ」で、フレール型専用収穫機で黄熟期に刈り取りを行っている。イネWCS乾物中のβ-カロテン含量は稲ワラ並(0~9.3mg/kg:日本標準飼料成分表2001年版)であり、1日当たりの粗飼料乾物摂取量は、イネWCSを給与した区が乾草や稲ワラ給与の場合よりも高い(表2)。 3. 血漿中ビタミンA濃度は、全期間WCS区で高く推移する傾向にあるが、19ヶ月齢以降値は低下する。また、一般に血漿中ビタミンA濃度が40IU/dL以下になると食欲不振などの欠乏症状が出ると言われているが、全期間WCS区は22ヶ月齢以降に3頭、前期WCS区は17ヶ月齢以降にすべての頭数に、対照区は18ヶ月齢以降から2頭その症状が見られる(図1)。 4. 枝肉成績は区間に差はない。特に、脂肪の色を表すBFS-No.は3であり脂肪の黄色化等、イネWCS給与の影響はみられない(表3)。 以上のことから、黒毛和種去勢牛24ヶ月齢肥育におけるイネWCSの給与は、対照区と比較しても増体、血中ビタミンA濃度および枝肉成績に差はないため、肥育全期間の粗飼料として利用できる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. イネWCSは採食性が良く、乾草や稲ワラの代替として利用できる。 2. イネWCSのβ-カロテン含量を低減するためには、中生品種を黄熟期に刈り取り、1日予乾後サイレージ調製することが必要である。 3. ビタミンA欠乏症状がみられた牛には、ビタミンA剤を投与する。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 収穫機 水田 肉牛 品種 |