タイトル | 豚精液の長期保存技術 |
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担当機関 | 茨城豚研 |
研究期間 | 2002~2004 |
研究担当者 |
海老沢重雄 須永静二 前田育子 |
発行年度 | 2005 |
要約 | モデナ保存液にBHT0.05mMを添加し、精液温度を38時間で5℃に温度降下することにより、精子活力+++70%を10日間保持できる。農家実証試験では、家庭用冷蔵庫(5℃)で8日間保存した低温保存精液の受胎率は91.7%、平均産子数は10.8頭である。 |
キーワード | ブタ、モデナ液、BHT、低温保存精液、家庭用冷蔵庫、受胎率、家畜繁殖 |
背景・ねらい | 豚の人工授精に用いる精液は、保存溶液の改良により、その保存性は向上しつつある。しかし、現在推奨されている保存温度は15℃であり、この温度での精液管理には特別な機材を必要とし、また保存可能期間も短い状況にある。そこで、特別な機材を必要とせず管理のしやすい温度で、かつ受胎率等の繁殖成績が低下しない低温保存精液の製造技術の確立が必要とされている。 試験目的としては、低温保存精液の保存温度を家庭用冷蔵庫が利用できる5℃で、保存期間を10日間で、精子活力+++70%以上を保持できる精液保存技術を開発する。 |
成果の内容・特徴 | 試験1: 温度降下時間の設定(図1) 供試精液は、あらかじめ濃厚部と精漿部を分けて採取する。先ず精漿により精子濃度を6億/mlに調整し、その後、保存溶液で3倍希釈する(最終精子濃度:2億/ml)。保存溶液にはモデナ液(SGI、(株)ナスアグリサービス扱い)を用い、保存精液量は、1回注入量の50mlとする。温度降下時間設定を、プログラムフリーザー(ET-1N、FHK)を用いて、P-1からP-4の4パターン(図1左)にしたところ、38時間で5℃に温度降下させるP-4のパターンが最適(図1右)となる。 試験2: 添加剤の種類と濃度(図2) 添加剤として、メチルヘスペリジン(MH:0.05、0.1、0.2mM)、L-システイン(0.5、1、2、5mM)及びブチルヒドロキシトルエン(BHT:0.025、0.05、0.1、0.2mM)の3剤について検討すると、MH及びL-システイン添加は殆ど効果がなく、BHT(SIGMA)0.05mM添加で7日目と10日目の精子活力が無添加の場合と比較して有意(P0.05)に高くなり、3剤のうちで最も有効な添加剤である。 試験3: AI試験 (1) 当所における受胎試験(表1) 試験結果をもとに低温保存精液を製造し、当所飼養のランドレース(L)種10頭、大ヨークシャー(W)種7頭の合計17頭の種雌豚にAIを実施する。保存期間が10日以内の低温保存精液では、12頭中11頭で受胎し、受胎率は91.7%、平均産子数は9.6頭である。保存期間12日以上では、5頭中受胎は認められなかった。 (2) 農家における実証試験(表2) 試験農家3戸に送付する低温保存精液の平均保存日数は7.8日で、12頭中11頭が受胎し、受胎率は91.7%、平均産子数は10.8頭である。 輸送は、あらかじめ5℃にして輸送した場合と輸送中に5℃になるよう保冷剤を工夫した場合とで差はなく、低温宅配業者による差も認められない。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 低温保存精液は、10日間の保存で繁殖成績等が低下することはなかった。加えて、保存性及び利便性の向上により人工授精の手間が軽減され、今後、人工授精の普及に役立つ技術である。 2. 産子数は保存期間が長くなるにしたがってやや少なくなる傾向が見られるが、保存10日間目の試験頭数が少なく、母豚側の要因等も考えられるので、その見極めが今後の課題である。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 長期保存・貯蔵 なす 繁殖性改善 豚 輸送 |