タイトル | 鶏ふんの吸引通気式堆肥化とリン酸スクラバ・もみ殻脱臭槽による簡易脱臭技術 |
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担当機関 | 栃木畜試 |
研究期間 | 2005~2007 |
研究担当者 |
星一美 岡本優 脇阪浩 |
発行年度 | 2006 |
要約 | 吸引通気式堆肥化処理に、溶液洗浄方式アンモニア回収装置(スクラバ)ともみ殻脱臭槽を組み合わせることで、鶏ふんの堆肥化時に発生する高濃度の臭気を有効に脱臭できる。脱臭使用後のもみ殻は、堆肥化時の副資材として利用できる。 |
キーワード | 鶏ふん、吸引通気式堆肥化、組み合わせ脱臭、スクラバ、もみ殻脱臭槽 |
背景・ねらい | 中小規模の養鶏農家において、堆肥化過程で発生する悪臭を確実に低減できる低コストで簡易な脱臭技術が求められている。そこで、畜草研および東北農研が開発中の吸引通気方式による堆肥化処理と溶液洗浄方式アンモニア回収装置(以後スクラバ)による脱臭処理を合わせたシステムに地域未利用バイオマスのもみ殻による脱臭槽を組み合わせることで、簡易・低コスト脱臭システムを開発する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 本方式の特徴は、堆肥舎床面から吸引通気により捕集された臭気を、スクラバでアンモニアを回収し、残臭をもみ殻脱臭槽で吸着脱臭する組み合わせ脱臭である(図1)。 2. 鶏ふんにもみ殻を副資材として混合した堆肥原料(重量約5t,水分59%,容積重660kg/m3)は、吸引通気(堆肥1m3あたり通気量30~80L/分)により発酵温度が冬期、夏期ともに70度以上に上昇し、また、有機物分解率は同規模で行った無通気堆肥化に比べ最終的に高く(図2)、吸引通気により好気発酵が促進される。 3. 堆肥原料表面から揮散するアンモニアは、平均218ppmと無通気堆肥化(1,055ppm)の約1/5に低減され、硫化水素、メルカプタン類も低減される(表1)。 4. 吸引排気中の高濃度のアンモニア(冬期9,800ppm、夏期17,400ppm)は、リン酸溶液(濃度23.1%)を循環、噴霧したスクラバで99%以上除去でき、硫化水素、メルカプタン類は、もみ殻脱臭槽で99%以上除去できる(表1)。 5. 堆肥原料中の窒素は、28日間の堆肥化処理で約61%減少するが、減少した窒素はスクラバのリン酸溶液に約56.2%、ドレイン(窒素含量約0.5%)に約5.3%回収できる。 6. 堆肥化処理・脱臭施設(図1)の建設費は、堆肥盤2,418,206円、付帯設備1,580,670円、スクラバ脱臭装置2,500,000円(据付費別)である。また、試験規模での生ふん1tあたりの処理費(28日間処理)は、薬液代9,238円、電気代冬期2,404円、夏期2,818 円(薬液;75%リン酸149円/kg、電気;契約5kW(1,020円/kW・月)、冬期10.39円/kWh、夏期11.43円/kWh)で、採卵鶏1万羽規模経営(生ふん100g/羽・日)では年間432,5千円と試算される。もみ殻は、ライスセンター等で無料(運搬費のみ)で入手できる。 7. 脱臭使用後もみ殻(水分約18%)を副資材とした鶏ふん堆肥原料(水分58%)の発酵温度は60度以上に上昇し、脱臭使用後もみ殻は副資材として再利用できる(図3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 堆肥化時の臭気の揮散低減や脱臭技術として、もみ殻が入手できる地域で活用できる。 2. スクラバの薬液は、pH5.5以上でアンモニア回収率が低下するので交換する。 3. もみ殻脱臭槽表面から臭気が漏れ出す場合には、攪拌して脱臭槽に入れ戻すか(ショートパスの解消)、または交換する。 4. ドレインは堆肥原料への散布(かけ戻し)、スクラバで回収したリン酸アンモニウム溶液は液肥としての利用等が考えられる。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 経営管理 低コスト 鶏 |