タイトル | 地域在来の天敵昆虫を利用した養鶏場におけるイエバエ防除システム |
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担当機関 | 栃木畜試 |
研究期間 | 2002~2006 |
研究担当者 |
岡本優 斎藤忠史 神辺佳弘 星一美 脇阪浩 |
発行年度 | 2007 |
要約 | 地域在来の天敵昆虫(ガイマイゴミムシダマシ、クロチビエンマムシ)と薬剤(プロチオホス製剤、シロマジン製剤)を組み合わせることで、養鶏場のイエバエを安定的に防除でき、かつ薬剤使用量を低減できる。 |
キーワード | 養鶏場、イエバエ、天敵昆虫、ガイマイゴミムシダマシ、クロチビエンマムシ |
背景・ねらい | 近年、畜産経営の規模拡大や混住化が進むなか、畜産から発生するハエは伝染病や寄生虫を媒介する存在として、大きな環境問題となっている。従来、ハエの発生には化学薬剤を中心とした対策が実施されてきたが、薬剤に対する高い抵抗性を持ったハエの出現により、防除が難しいのが現状である。 そこで、地域在来のハエの天敵昆虫を有効活用し、生物学的防除と化学的防除を組み合わせ、環境や生態系に配慮したハエの総合防除システムを確立する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 栃木県内で利用可能な昆虫を選定するため、県内3ヶ所の養鶏場で昆虫相及びハエ発生量調査を行ったところ、堆積鶏ふん中にガイマイゴミムシダマシ(以下ガイマイ)とクロチビエンマムシ(以下クロエンマ)が多く生息する養鶏場では、ハエの発生が少なかった(表1)。 2. ガイマイとクロエンマの蛹化抑制(捕食性)能力を評価したところ、クロエンマは1匹あたり約6匹のイエバエ幼虫を捕食した。ガイマイはクロエンマに比べ捕食性が劣るがイエバエ幼虫を捕食することから、ガイマイとクロエンマは天敵昆虫として利用できる(表2)。 3. 天敵昆虫と併用可能な薬剤を選定するため、各種薬剤に対する天敵昆虫の感受性を調査した。有機リン剤のプロチオホス製剤はクロエンマ、IGR剤のシロマジン製剤はガイマイをやや死滅させたが、天敵昆虫と併用可能な薬剤である(表3)。 4. 鶏舎環境を再現した500Lのコンテナ内で、天敵と薬剤を組み合わせた総合防除システムの実証試験を行ったところ、天敵昆虫を数回投入することで、規定用量の2倍に希釈した薬液を切り替えて(6~8月プロチオホス製剤、9~11月シロマジン製剤)散布しても、安定的にイエバエの発生を抑制できる(図1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. ハエ対策の基本は、主な発生源である家畜ふんを速やかに搬出し、適正に堆肥化処理することであるが、それらが困難な養鶏農家において、常在する昆虫を有効利用することで、薬剤に過度に頼ることなくハエの発生を抑制できる。 2. 天敵昆虫によるイエバエ防除効果は、時期や個体数などに影響されるため、安定的に防除するには他の防除法と組み合わせることが望ましい。 3. ハエの薬剤抵抗性は、地域や現場の薬剤使用状況により程度が異なるため、抵抗性の有無を随時確認する必要がある。 4. ガイマイは、多発した場合に断熱材等を穿孔する害虫と報告されているため、多発する場合には、ガイマイの死滅割合の高いフェニトロチオン製剤(クロエンマの死滅割合は低い)を散布し、ガイマイの発生だけを抑制する(表3、図1)。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 病害虫 害虫 規模拡大 経営管理 抵抗性 鶏 防除 薬剤 |