タイトル |
成分を調整せずに市販飼料にパン残さを配合し霜降り豚肉を生産する技術 |
担当機関 |
埼玉農総研 |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
中村嘉之 藤野幸宏
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発行年度 |
2008 |
要約 |
市販飼料に30%および50%パン残さを混合した飼料を、3元交雑種(LWD)の肥育後期の仕上げ前2ヶ月間に給与すると、筋肉内の脂肪含量やオレイン酸割合が上昇し、霜降り豚肉になる。
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キーワード |
パン残さ、肥育豚、マーブリング、オレイン酸、リジン
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背景・ねらい |
飼料の価格が高騰し、畜産経営における大きな重圧となっている。本試験では、県内のパン工場から排出される耳主体の食パン残さを、通常の市販飼料に30~50%混合し、栄養成分を調整せずに出荷前の2か月間豚に給与することで、ローコストでおいしい霜降り豚肉を生産する技術を検討する
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成果の内容・特徴 |
- 3腹から生まれたサキタマ系3元交雑種(LWD)計12頭を去勢した後、4頭ずつ3区に分け試験に用いる。一般に農家で使用されている市販飼料と、市販飼料にパン残さ30%および50%混合したパン残さ混合飼料を成分調整せずに、体重60kgから110kgまで約2ヶ月間給与して出来た豚肉を比較する。
- パン残さ混合飼料の一般成分は市販飼料と比較して、粗蛋白質、粗灰分、粗繊維、カリウム、リン、水分は低く、粗脂肪が高い。アミノ酸組成では、パン残さ混合飼料では、グルタミン酸およびプロリン以外は全て市販飼料より低い。また、脂肪酸組成は、パン残さ混合飼料は、市販飼料と比較してオレイン酸(18;1)が高く、リノール酸(18;2)が低い。
- 市販飼料とパン残さ混合飼料では発育に差はなく(図1)、パン残さ混合飼料の飼料要求率は配合飼料と同程度である(表1)。
- 豚肉の品質において、50%パン残さ混合飼料を給与すると筋肉内脂肪含量(IMF)は4.07%から5.77%になり(表1)、マーブリングスコアー(米国NPCCの基準)が1.7から4.1に上昇する(表1)。脂肪酸組成においては、オレイン酸割合が36.9%から39.1%に上昇し、リノール酸割合は9.35%から7.53%に減少する(表2)。
- 市販飼料および50%パン残さ混合飼料で育てた豚のロース部分(背最長筋)を20~50代の計65名のパネーラーを対象に2回食味試験を実施し、2点比較法により判定する。その結果、パン残さ混合飼料で育てた豚肉は、市販飼料のものと比較して香りが良く、柔らかくておいしい(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- パン残さ混合飼料の豚への給与は、発育に問題なく、筋肉内脂肪含量やオレイン酸割合が上昇し、霜降り豚肉が出来るので、ローコスト(パン残さ15円/kg)にブランド豚肉の生産が可能となる。
- パン残さ混合割合50%が最も良い霜降り状態で、味も良くなると思われるが、厚脂になる可能性もあるので、豚の品種特性や出荷後の取引方法を考慮する必要がある。
- パン残さ混合飼料は、一部を除く一般成分およびアミノ酸含量が市販飼料と比較して低いが、2ヶ月間の給与では発育に問題はない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
経営管理
コスト
出荷調整
品種
豚
良食味
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