タイトル | イノシシの跳躍能力 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 | 1999~2000 |
研究担当者 |
宮重俊一 江口祐輔 石井忠雄 林孝 |
発行年度 | 2001 |
要約 | 餌付け・誘導により、野生イノシシの跳躍能力を測定できる。成獣は、高さ120cmの障害物を飛び越えることができる。生後半年の幼獣においても、代表的な防除技術であるトタン板の高さ(65cm )を飛び越えることができる。餌の獲得を目的としたとき、イノシシは助走しないで障害物を跳躍する。 |
キーワード | イ ノシシ、野生動物、行動、跳躍能力、運動能力、鳥獣害、被害対策 |
背景・ねらい | 近年、野生鳥獣による農作物被害が増加しており、農業が継続できない事態も見受けられる。イノシシの運動能力に対する科学的データはなく、現場では、イノシシの習性や行動に対する誤解から、効果の期待できない被害対策を施している場合が多い。防除柵を設置しても跳び越えられて、田畑へ進入されることもしばしばである。そこで本研究は防除柵の効果向上にむけて、イノシシの跳躍能力を測定した。 |
成果の内容・特徴 | 1. 野生イノシシの跳躍能力を測定した。鉄製パイプ(直径5 cm)で4m 四方の実験柵を作り、その中に餌をまいて、イノシシの侵入を観察した。野生個体の餌付けによる馴致に6 カ月間を要した。イノシシが柵内の餌を摂食するようになったところで、柵を11cmずつ高くしていき(パイプ間の隙間6 cm)、イノシシの跳躍行動を記録した(図1)。 2. 野生成獣4 頭の最高跳躍記録は88 ~110 cm(助走なし、障害物との接触なし)であり、1 頭は実験柵の最上段に接触しながらも120 cmを跳躍した。生後半年の幼獣6 頭(推定体重20 kg)中4 頭はトタンの高さ相当の66 cmを助走なしで飛び越えた(図2)。 3. イ ノシシは獣道から実験柵に近づき、周囲を警戒、柵の高さ等を確認し、頭部を上下に動かして視線を変えて、助走することなく、跳躍した。跳躍時の足の踏み切りは、障害物に近い位置(30-40cm )で行った(図3)。 4. 飼 育イノシシを供試し、跳躍能力の限界値を測定するため、まず、実験柵への反応を調べた。柵の隙間を10 cm以下に設定すると、限界まで跳躍し、跳躍に失敗しても再度跳躍する。隙間が20cm あると、柵の高さが70 cmであっても、隙間を通り抜けることを試み、跳躍しなくなる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本 研究の結果を被害防除の参考にする場合は、単に跳躍記録(高さ)だけにこだわるのではなく、田畑を2 重に囲うなどで障害物に奥行きを持たせて、イノシシの踏み切りの位置をずらすような工夫も有効である。 2. 隙 間が20cm あると、柵の高さが70 cmであっても、成獣は跳躍しなくなるが、幼獣の柵内への進入が可能になる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 鳥獣害 防除 |