タイトル | ウシ栄養膜小胞を利用したウシ凍結胚移植の受胎率向上 |
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担当機関 | 山口畜試 |
研究期間 | 2000~2002 |
研究担当者 |
藤井陽一 小川賀雄 田頭明子 市野清博 藤井満貴 |
発行年度 | 2002 |
要約 | ウシ伸張期胚盤胞の回収は発情後15~16日目が効率的であり、これを細切し培養することで形成される栄養膜小胞をウシ凍結胚と共移植することで受胎率の向上が期待される。 |
キーワード | 栄養膜小胞、TBV、胚移植、凍結胚 |
背景・ねらい | 牛の胚移植技術においては、胚の効率的活用の面から凍結胚移植が主流となっているが、凍結胚は新鮮胚に比べ受胎率が低い傾向にある。 そこで、伸張期胚盤胞の栄養膜細胞が産出するインターフェロンτが胚と母体間の妊娠認識や黄体退行阻止による妊娠維持に関与するとの報告を基に、伸張期胚盤胞の栄養膜を細切し培養することで形成される栄養膜小胞(trophoblastic vesicle:TBV)を効率的に作出するための伸張期胚盤胞の回収時期を検討し、さらにTBVを凍結胚と共移植してTBVが凍結胚の受胎性に及ぼす効果について検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 延36頭において、過剰排卵処理あるいは自然発情での人工授精および体外受精胚移植により、発情後14~17日目に伸張期胚盤胞の回収を行い15頭から41個(1.1個/頭)の切断可能な伸張期胚盤胞(長さ3mm以上で破損のないもの)を回収した。回収効率は、発情後15~16日目の間に実施する方法が良い(表1)。 2. 外科手術用メスを用いた実体顕微鏡下での栄養膜の切断は容易であり、また切断後の培養(20%子牛血清加TCM199,5%CO2,95%空気,38.5℃,24~72時間)によりTBVは高率(92.6%)に形成される(表2)。 3. ダイレクト法(1.8Mエチレングリコール+0.1Mトレハロース+20%子牛血清加m-PBS)によるTBVの凍結は、融解後の再形成率が高い(83.9%)(表2)。 4. ダイレクト法により凍結融解した胚1個とTBV3個をセットとして16頭に移植した結果、10頭(62.5%)が受胎し、凍結胚のみの移植成績(8/17頭、47.1%)より高い傾向を示す(表3)。 5. 8頭に凍結融解後のTBV(3個/頭)の単独移植を行い1頭で発情回帰が遅延したことから、TBVは単独でも黄体機能を維持する可能性を示す(表4)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. ウシ胚移植において、凍結胚とTBVを共に移植することで受胎率向上が期待される。 2. TBVを共移植した場合、不受胎でも発情回帰が遅れる可能性を考慮して実施する必要がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 受胎率向上 |