タイトル | 耕作放棄された農用地への移動放牧技術 |
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担当機関 | 山口畜試 |
研究期間 | 1998~2002 |
研究担当者 |
米屋宏志 沢井利幸 森重祐子 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 棚田等の耕作放棄地においても、放牧及び電気牧柵を経験した牛を用いて、放牧飼養することにより、耕作放棄地の草刈り作業等の保全管理が可能となる。 |
キーワード | 耕作放棄地、放牧、電気牧柵、牧養力 |
背景・ねらい | 中山間地において水田等農用地の耕作放棄地が増加している。そこで、肉用繁殖雌牛による耕作放棄地の草資源を有効活用するために、省力で設置できる放牧施設の検討及び牧養力を調査し、耕作放棄地の放牧利用方法を確立する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 移動放牧で用いる放牧牛は、飼養管理が容易な妊娠確認された放牧経験があるものとする。最低放牧頭数は、1カ所当たり2頭とする。放牧開始時に殺ダニ剤を適量、滴下する。 2. 移動放牧で用いる放牧施設は、簡易な市販ソーラー式電気牧柵を用い、電牧線の高さを60、90cmの2段張りとする。市販ソーラー式電気牧柵は、軽量で電牧柱150g/本、電牧線1.1kg/400m巻であり、持ち運びが容易にできる(写真1)。本施設を設置する時間は、1人で25aを60分を要し、撤去は36分を要する。資材費は、試算値で面積1ha周囲400mとするとソーラー電牧器1台×124千円、電牧線(2段張り)800m×18.4円、電牧柱(5m間隔)100本×494円、ゲートハンドル2個×630円となり、合計で190千円である。また、飲水の確保が困難な場合は、コンテナ(容積200リットル)と貯水用タンクを組み合わせることにより、移動式飲水施設(資材費199千円)が可能である(写真2)。また、放牧牛の飲水量は、最大で45リットル/頭・日を確保する(図1)。 3. 電牧の馴致は、放牧経験牛を用い放牧開始時に牛の鼻を通電した電牧線に数回当て、牛が拒絶するまで行い牛を同時に放す。このことにより放牧牛は、脱柵をすることなく飼養できる。 4. 放牧を試みた耕作放棄地の土地条件は、水田で棚田、ミカン園・梅園で傾斜地にあり、植生は、ススキ、セイタカアワダチソウ、クズが主体である。 これら野草の草丈、生草収量は、57~151cm、1.4~3.2t/10aであり(表1)、実際の放牧の結果から牧養力は、18~25日・頭/10aが目安となる(表1)。また、現地において放牧牛は、棚田、傾斜地においても栄養不良、疾病及びケガ等の可能性は少ないと思われる。放牧終了後の放牧地は、ススキ、セイタカアワダチソウの枯れた茎が残る程となり、草刈り等の農地保全が可能である。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 中山間地域等直接支払制度の農業生産活動等で利用可能である。 2. 現地で放牧を実施する際は、事前に地域住民等に了承を得ることが望ましい。 3. 畜産公害は、放牧頭数2頭であれば地域住民から問題となる可能性が少ない。 4. 現地実証の市町村、農家、周辺住民からは、耕作放棄地管理に有効な技術として高い評価を得られた。また、本技術は、県内において平成13年度から県、市町村が事業化及び個人負担により、県内で延べ25市町村、48カ所、33.9haで実施されている。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
カテゴリ | 傾斜地 飼育技術 水田 中山間地域 繁殖性改善 放牧技術 |