タイトル |
ビニールハウスとトラクターを活用した低コスト堆肥化処理 |
担当機関 |
島根畜試 |
研究期間 |
2000~2002 |
研究担当者 |
宇谷道弘
松本百合子
有馬儀信
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発行年度 |
2003 |
要約 |
高水分牛ふん尿をビニールハウス内において、トラクターで撹拌しながら発酵させ る方法は、堆肥化期間が短く、低コストな方法として普及が可能である。
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キーワード |
牛ふん尿、ビニールハウス、トラクター、堆肥化処理、低コスト
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背景・ねらい |
畜産環境対策として、ふん尿処理施設の整備を早急に進めるためには施設費や処理費の低コスト化が必要である。特に乳牛のふん尿は水分率が高く、堆肥化のための水分調整に大量の副資材を添加する必要があり、これの購入費や添加による増量で施設が大きくなるなど、コストが高い。安価な園芸用ビニールハウス内で、一般農家で所有されている農耕用トラクターで撹拌・移送する方法は、非常に少ない施設費ながら発酵および乾燥効率が高く、短期間で低水分堆肥が生産できる。これを戻し堆肥として生ふん尿の水分調整に用いることにより、処理費も少ないこの方法を低コスト堆肥化方法として普及する。
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成果の内容・特徴 |
- 水分80%前後の牛舎生ふん尿を、春~秋はハウス内戻し堆肥、冬は春~秋に製造・保存した戻し堆肥で水分70%前後に調整後ハウス内で1か月間撹拌・移送することで水分は50%前後に低下する。発酵熱と太陽熱で水分蒸発は年平均5.0kg/m2・日(前年調査では冬期4.9kg/m2・日、夏期は過乾燥防止のため、乾燥状況により処理面積を縮小)で、乾物分解率は43.5%となり、堆肥量は生ふん尿量から1/4以下に減量する(表1)。
- 乳牛1頭分に必要なハウス面積は10m2で、これの建築費は5万円(一般の施設は32~44万円/頭)、1日当たりのトラクター運転時間は1.5分、燃料は0.1リットルである。
- トラクターの移送能力は1回の攪拌で20~30cmで、1日の移送目標である1mを移送するには3~5回の攪拌を要する。また、破砕力が強いロータリーで繰り返し撹拌することにより、敷料の稲ワラや野草を破砕し良質堆肥が生産できる。
- ハウス処理(一次処理)済み堆肥を堆積発酵処理(二次処理)を行った場合、3.5か月で完熟堆肥(切返し後の品温が50℃以上にならない)となり、堆肥化処理期間が堆肥舎切返し方式(通常6か月)の約1/2に短縮できる。また、ハウス処理と堆肥舎処理の組合せ方式での成分等成績は品質評価上特に問題はない(図1、表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- ハウス床は遮水シートの上を土間仕上げが低コストであるが、生ふん尿投入場所は土が泥濘化するので、コンクリートか遮水シート上の土間に鉄板を敷いて防止する。
- ハウスの両側をブロック3段積とし、その上にハウスを設置することにより壁際まで使え、ふん尿処理有効面積が増える(写真1)。
- 冬期の水分調整は、春~秋に製造・保存した低水分戻し堆肥で行う。
- .換気のための裾上げはハウス内気温を下げて、水分蒸発に逆効果である。長さ40~50mのハウスなら、トンネル風洞現象の自然換気で十分である(写真1)。
- 暑熱期は早朝または日没後にトラクター運転した方が作業し易い。
- 悪臭発生は好気性発酵させるため少ない。ハウス内でのトラクター運転作業に差し障りはなく、ハウスの外では感じられない。
- 現在、島根県内では肉用牛農家2戸と酪農家2戸で設置を計画中である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
環境対策
乾燥
コスト
低コスト
肉牛
乳牛
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