丸亀扇状地型平野における浅層地下水の灌漑水としての反復利用の実態

タイトル 丸亀扇状地型平野における浅層地下水の灌漑水としての反復利用の実態
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター
研究期間 2000~2002
研究担当者 吉川省子
山本博(畜産草地研)
吉田正則
花野義雄
発行年度 2003
要約 香川用水丸亀分水から給水を受ける扇状地帯水田では、浸透水量のうち灌漑用として再利用される水の割合(反復利用率)は55%と推定され、分水地点から海に流下するまでに灌漑利用されるみかけの反復利用回数は平均3回と概算される。
キーワード 扇状地型平野、浅層地下水、灌漑水、湧水、反復利用
背景・ねらい 丸亀扇状地型平野では、山間の満濃池に貯留した雨水を、灌漑用河川を経て網目状に分岐した用水路へ導いている。一方、吉野川から引いた香川用水は扇状地上部を横断し、主に1地点(丸亀分水)から分水され、さきの用水路に導かれ、満濃池からの水と合流して、扇状地を下りながら灌漑利用されている。さらに、雨水や灌漑水により涵養される浅層地下水は、湧水(出水:ですい)として引き出されて用水路に導かれ、再び灌漑利用されている。これまでに、冬季に水田にてニンニク、タマネギ等の野菜栽培が盛んな本地域において、水田の土壌、土壌水、及び隣接出水のNO3-N濃度測定から、灌漑水の浸透により冬作施肥窒素が浅層地下水へ流出することを明らかにした(四国農試平7成果情報)。地下水汚染を生じやすい本地域において、限られた水資源を有効に利用するために、浅層地下水の灌漑水としての反復利用の実態を明らかにする。
成果の内容・特徴 1.
丸亀扇状地型平野上の湧水を伴う浅層地下水の動きの模式図と水収支式を図1に示す。 図2に示す水田領域(破線の内側3.3km2)において、灌漑用水を香川用水に専ら頼り、その配水量がピークに達した干ばつ年の夏の20日間を、浸透水の反復利用率算出の対象期間とする。その間は、領域への地表流入水Sinは香川用水のみであり、領域下部では地表流出水Soutはゼロであった。水収支式は、平均減水深Hは、蒸発散量Eと浸透水量Fの和であり、地表流入水Sin、降雨P、出水からの供給Gd、出水以外の浸出による用水路への供給Gsでまかなわれたことを示す。GdとGsは浸透水の地表水への戻りであるから、浸透水の反復利用率RFは、(Gd+Gs)/Fと算出され、それは水収支式より、(H-Sin+Sout-P)/Fとなる。この領域では、浸透水の反復利用率は55%と計算される(表1)。
2.
通常降雨年の潅漑期において、図2に示すうちの約40の出水と、隣接灌漑用水のNO3-N濃度を標高に対してプロットし、それぞれの回帰線を求める(図3)。これらの2つの回帰線が平行していることから、同じ標高におけるNO3-N濃度差(平均2.8 mg L-1)が1回の灌漑による浅層地下水への負荷と考えられる。出水の帯状分布および傾斜の規則性から浅層地下水流量の急激な変動はないと推定される。以上の推定から、分水地点から海へ流下するまでの浅層地下水のみかけの反復利用回数(出水は潅漑用水と混合して下流の水田で順次反復利用されるが、全量が1度に利用されると仮定)は、河口での出水のNO3-N濃度8.7 mg L-1と1回の灌漑によるNO3-N濃度増加分から、平均3回と概算される(用水路や地下での脱窒を考慮していない)。
成果の活用面・留意点 冬季に野菜栽培の盛んな水田地帯では、潅漑水の浸透による肥料成分の溶脱により地下水汚染を生じ易いため、畑作の施肥効率向上を図る必要がある。
図表1 219772-1.gif
図表2 219772-2.gif
図表3 219772-3.gif
図表4 219772-4.gif
カテゴリ 肥料 水田 施肥 たまねぎ にんにく 野菜栽培

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