タイトル |
2段吊り上げシーソーシステムによるイチゴの立体栽培装置試作 |
担当機関 |
KCオフィス |
研究期間 |
2004~2006 |
研究担当者 |
伊藤栄治
高鷹生男
田原由恵
渡邊健三
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発行年度 |
2004 |
要約 |
イチゴ栽培ベッドを各列2段にして吊り上げて配置することにより、慣行栽培の4倍の栽植密度を可能とする装置である。栽培ベッドは、駆動系による上下移動、シーソー動作により、配置を変えることができる。
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キーワード |
イチゴ、施設、栽培ベッド、吊り上げ、上下移動、シーソー動作
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背景・ねらい |
イチゴ栽培では、作業の軽減化を図るため、土耕栽培から立ち姿の作業が可能な高設栽培へと技術改善が進んでいる。高設栽培では、生産コストの低減を図るため、高設施設費の低減化や多収品種の育成等の開発が行われている。ここでは、施設内の空間を有効利用して面積あたりの植え付け株数を4倍にする「2段吊り上げシーソーシステム」の試作装置を紹介する。
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成果の内容・特徴 |
- 本システムは、栽培ベッドをワイヤーで各列2段に吊り上げる方式である。高設栽培で作業通路としている空間にも2段の栽培ベッドを配置する。これにより単位面積当たりのイチゴ植え付け株数は高設栽培の4倍となる(図1,2)。
- 栽培ベッドを吊り上げているワイヤーをハウス上部の駆動軸に巻き、軸の回転によりベッドの移動を行う。栽培ベッドの移動は、自動制御装置により任意の時間間隔で行うことができる。
- 栽培ベッドは列ごとに上下移動でき、また、2段の栽培ベッドはシーソー動作により上下を入れ替えることができる(図3)。これらの動作により、いずれの栽培ベッドも最上位から最下位まで移動でき、各栽培ベッドの受光量を均一にすることができる。なお、最下段の栽培ベッドにおける受光率は,最上段栽培ベッドの4分の1程度である。
- 試作施設(施設:間口6m×長さ16m、栽培ベッド:幅27cm×高さ20cm×長さ12m、16本)に要した施設費(施工費含まず)は400万円で、その内訳は、施設架台費280万円、制御装置25万円、栽培ベッド35万円、給液装置13万円、暖房装置47万円ある。既存の広島型高設栽培に要する施設費は10a当たり約750万円であり、既存高設栽培10aと同じ株数を栽培する本システムは、2.5aで施設費1,000万円となり、現時点では1.3倍の価格である。
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成果の活用面・留意点 |
- イチゴ株の生産性を高位に維持するためには、本システムにおけるイチゴ光合成特性から、冬季は効率的に受光できる栽培ベッド移動サイクルの確立が必要である。逆に、春夏季では強光を回避する栽培ベッド移動サイクルの確立が必要である。
- 加温方法は、栽培ベッド培地内とイチゴ株付近の配管に温湯を循環させ、培地内と株付近を生育適温に確保する局部加温方式を採用し、省エネルギー化を図る必要がある。
- 本システムでは、イチゴ生産株を抜き取らずそのまま栽培ベッドに据え置いて多年利用する「株据置栽培」技術を取り入れることにより、育苗の省力化を図る。
- 本システムは、作業の安全性を高めるとともに、人間工学に基づいた作業性の評価を行い、作業効率の良い栽培ベッド配置を検討する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
育苗
いちご
コスト
施設栽培
自動制御
省エネ・低コスト化
省力化
品種
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