タイトル |
判別分析を用いた乳牛の乾乳期血液成分値による産後疾病の発症予測 |
担当機関 |
兵庫農総セ |
研究期間 |
2004~2008 |
研究担当者 |
生田健太郎
高田 修
小鴨 睦
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発行年度 |
2004 |
要約 |
判別分析から得られた予測式(判別関数式)を用いて、乾乳牛の血液成分値から判別得点を求めることにより、産後における疾病発症の有無を予測できる可能性がある。
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背景・ねらい |
乳牛では産後に疾病の発症が集中するが、これには乾乳期の栄養・飼養状況が強く関連する。栄養状況の指標として、従来から血液成分値が代謝プロファイルテストなどで用いられてきたが、血液成分ごとに基準値や正常値と比較する評価法では産後疾病の発症を予測することが困難である。そこで、多変量解析の一手法である判別分析による産後疾病の発症予測を試みた。
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成果の内容・特徴 |
- 個別管理の乾乳期経産牛23頭を用いて、分娩まで毎週、血液成分13項目の検査を行い、同一牛から1~9回(平均6.1回)の採血で得られた延べ140頭分の個体データを解析する。
- 供試牛を産後2週間以内における疾病の有無により、疾病群(ケトーシス・関節炎・乳房炎など)12頭と健康群11頭に分ける。個体データを分娩までの実質週次で、7週以前、6~5週前、4週前、3週前、2週前、1週前以降の6つに区分する。各週次ごとに判別分析を行い、産後疾病の発症を予測するための予測式(判別関数式)を作成する。
- ボックスM検定により、疾病群と健康群の間で個体データの等分散性が成り立つ場合、予測式の精度が判別的中率で75%以上かつ相関比で0.5以上の場合、産後疾病の発症予測に適用可能な予測式が得られたものとする。その結果、7週以前、4週前、2週前、1週前以降で予測式が得られる(表1、表2)。
- 酪農家3戸の乾乳牛を対象に、同一牛に対し1~2回の血液検査を行う。分娩予定日を基に採血時点における分娩までの週次を計算し、表2の週次に該当する場合は、その予測式に血液成分値を当てはめて判別得点を求める。判別得点の符号が負なら健康、正なら疾病と予測する。産後2週間以内における疾病発生状況(胎盤停滞、ケトーシス、乳房炎など)を把握し、予測結果と照合することにより、予測式の精度を検証する。供試牛22頭中14頭(64%)の産後疾病発症の有無を正しく判別するので、誤判別率は36%である。誤判別事例のうち、実用上問題となるのは疾病牛を健康と予測して見逃すことだが、そのような事例は既に予防の時機を逸した分娩直前の2頭(9%)である(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 予測式の作成および検証に供試した牛群では分娩予定の3~4週前から濃厚飼料給与を開始することから、そのような飼養管理の酪農家に本研究の予測式は適用できる可能性がある。
- 産後疾病発症の危険性がある個体を摘発し、乾乳期間中に積極的な予防措置を行うことで、発症を未然に防止できる。
- 産後疾病発症の予測をより高い精度で行うには、様々な飼養形態の牛群を対象とした広範囲な調査により例数を増やし、乾乳牛の飼養条件に応じた予測式を設定する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
飼育技術
乳牛
評価法
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