タイトル | 地域循環型社会形成のための農地由来バイオマスの利用効率評価 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 | 2005~2005 |
研究担当者 |
安武正史 |
発行年度 | 2005 |
要約 | 農地はバイオマス利用の観点から見ると利用効率が高く地域循環型社会形成における役割が大きい。旧愛東町のケースでは、光合成で固定した炭素3,600tの32%が食材、20%が畜産部門での利用となる。 |
キーワード | バイオマス、資源循環、BDF |
背景・ねらい | 特にバイオマスというと賦存量が大きいのは森林であり研究面での関心も高い。また、BDF(Bio Diesel Fuel=生物由来のディーゼル燃料)も研究が進み実用化している。これに対して農地に対する研究的関心は比較的薄い(日本のバイオマス量の中で重量比で、廃木材37.8%、農地由来バイオマスは3.3%)。しかし、農地は多様な利用が可能であり、農道など森林に比較して運搬のためのインフラも整備されている。従って実現性の高いシステムの構築の可能性がある。そこで、循環型社会の構築を目指している町を例にとり、農工研で開発された「バイオマス資源循環利用診断プログラム」を用いて、農地の役割を炭素とリンの循環状況から評価し、バイオマス研究の方向性を検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 森林の木質バイオマスのポテンシャルは大きいものの、これを効率的に利用するための技術開発がさらに必要である。多くの市町村では有効に使われずに、年々木質バイオマスが蓄積されている状態である。なお滋賀県の森林全体では1年間に炭素152万tが蓄積され、この内1万t余りが木材として利用されている計算となった。町単位での木材出荷量の把握は困難であるが、平均で蓄積量の1%未満ということになる。 2. BDFは実用化され普及も進んでいるが、地域における物質循環の中で見ると役割は小さい。ただし人間が廃棄しているごみから回収する炭素の割合としてみるとかなり大きくなる。旧愛東町の例で見ると、2∼4割と見ることができる(旧愛東町内だけで廃食油1万リットル(計画値)集めるのは困難で、実際町外の廃食油も集めてBDFを生産している)(図1)。 3. 農地は森林に比べて単位面積当たりの炭素固定量も少なく、面積も少ないため、炭素固定量は森林よりもだいぶ少ないが、旧愛東町のケースでは、光合成で固定した炭素3,600tの32%が食材、20%が畜産部門での利用となり利用効率が高い(図1)。 4. リンは植物の吸収率が低いことが知られているが、化学肥料の投入量に対して食材となった量は8分の1と極めて低い(図2)。このことは、植物のリンの吸収効率を高める研究により環境負荷低減の効果が高いことを示している。 5. 農地由来バイオマスは食材としての利用も含めると利用効率が極めて高いだけではなく、土壌、河川の環境問題にも関連が深い。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 農地を主体としたバイオマスプロジェクト等の評価に活用できる。 2. 算出の基となっているモデルは、「バイオマス資源循環利用診断プログラム」 (Ver.2.0)2004,P第8357号-1である。 3. モデルの農地等の状況は現状を示すものだが、BDFと籾殻燻炭は初年度(通年の実績がない)のため計画値で計算した。他の主要な数値の出所は表1に示す。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 肥料 環境負荷低減 出荷調整 |