タイトル | イネ紋枯病菌Rhizoctonia solani AG-1 IAによる水田輪作ダイズの葉腐病と「青立ち」 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 | 2003~2005 |
研究担当者 |
竹原利明 宮川久義 大藤泰雄(東北農研) 佐藤清之(広島農改) 寺田英生(広島農改) 岩本浩美(広島農改) 越智 直(中央農研) 内藤繁男(北大) 見世大作(広島防除所) 長戸 玄(広島防除所) |
発行年度 | 2005 |
要約 | 水田輪作ダイズでは、高温多雨のときイネ紋枯病菌によるダイズ葉腐病が多発することがあり、重症株では着莢数が減少して収穫期に落葉が遅れる「青立ち」症状を呈するため、大きな減収要因となりうる。数種薬剤のダイズ茎葉散布により、葉腐病の発病と青立ちを抑制できる。 |
キーワード | 水田輪作、ダイズ、葉腐病、Rhizoctonia solani AG-1 IA、イネ紋枯病、青立ち |
背景・ねらい | 2004年8月∼9月に、広島県内各地(合計約90ha)の水田輪作ダイズ(前作はイネ)で、くもの巣状の菌糸をともなう下位∼中位葉の葉腐れおよび莢腐れ・落莢症状が多発し、収穫期に葉が十分落葉しない「青立ち」症状を呈し大きく減収した。青立ちは機械収穫時の汚損粒の原因ともなるため、人力による青立ち株の抜き取りに多大の労力を要する。そこで、青立ちと減収の発生原因を究明するとともに、薬剤防除の可能性を検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 5箇所の激発圃場の全てで、収穫期のダイズの茎および莢上に多数形成された菌核(直径1∼3mm)から糸状菌Rhizoctonia solani が分離された。本菌はダイズ葉への無傷接種で原病徴を再現し、接種菌が再分離される。このことから、本病を既知のダイズ葉腐病と同定できる。 2. ダイズ葉腐病菌の菌糸融合群(anastomosis group)とその培養型(またはサブグループ)としてAG-1 IA、AG-1 IB、およびAG-2-3が知られているが、本菌の場合イネ紋枯病菌と同じAG-1 IAである。本菌はイネ葉鞘への挟み込み接種で紋枯症状を引き起こし、イネ上に多数の菌核を形成する。イネへの病原力は対照に用いたイネ紋枯病菌とほぼ同等である(図1)。また、イネ紋枯病菌はダイズ分離菌と同様にダイズに病原性を示す。なお、広島県内におけるダイズ葉腐病の多発地域は、イネ紋枯病も多発傾向にある。 3. 人工的に多雨条件としたダイズ圃場での接種試験で、ダイズ葉腐病の発病により莢腐敗が生じ、収穫期の莢数が減少する(図2)。また、発病程度と青立ち症状の発生率に強い相関が認められる(図3)。このため、葉を残したまま莢数が減少することにより、青立ちおよび減収が生じると考えられる。 4. 莢伸長期にアゾキシストロビン水和剤(20%)(2000倍)、フルトラニル水和剤(40%)(1000倍)、またはバリダマイシン液剤(500倍)をダイズ茎葉に散布することで、発病・青立ちおよび減収を抑制できる(図4)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. アゾキシストロビン水和剤、フルトラニル水和剤およびバリダマイシン液剤は、平成18年2月現在、ダイズ葉腐病に対して農薬取締法に基づく登録がされていないので、ダイズ葉腐病に対しては試験研究以外には使用できない。 2. 葉腐病が多発した地域は、2004年8月∼9月はまれに見る高温・多雨条件で、それが多発要因になったと考えられる。 3. ダイズ葉腐病は前年のイネ紋枯病の菌核が感染源となっている可能性が高く、イネ紋枯病の多発した水田後作でのダイズ栽培(特に高温・多雨年)では葉腐病に注意を要する。 4. ダイズ上での本菌の完全世代(担子胞子)の形成は確認していない。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 病害虫 水田 大豆 農薬 防除 薬剤 輪作 |