鉄コーティング種子の大量製造技術

タイトル 鉄コーティング種子の大量製造技術
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター
研究期間 2006~2007
研究担当者 山内稔(近中四農研)
土門正幸
嘉納百樹
藤原逸平(金子農機)
発行年度 2007
要約 浸種したイネ種子(乾籾300kg)を鉄粉で造粒した後、通風、水スプレーおよび乾燥工程を経て、3日間で半年間以上保存できる鉄コーティング種子に仕上げる技術である。種子の発芽率が97%のとき、鉄コーティング種子の発芽率は94%となる。
キーワード イネ、湛水直播、鉄コーティング種子、大量製造
背景・ねらい 鉄コーティング種子の湛水直播では浮き苗や鳥害を軽減できる。またコーティング種子を十分に乾燥させれば長期保存も可能であり、省力化も期待できる。しかし、鉄コーティング種子の製造においては、鉄の酸化反応による発熱のため種子を傷めやすい。そのため種子を鉄粉で造粒後、薄く広げて放熱させながら、同時に酸化反応を進めるため種子に水をスプレーするなどの手間のかかる作業が必要である。この後の自然乾燥に少なくとも1週間を要する。
そこで、空気循環型乾燥機を改造し、その中で放熱、水スプレーおよび乾燥の一連の工程を完了し、鉄コーティング種子の製造を省力化する。
成果の内容・特徴
    種子300kg(乾籾重)を2~3人で鉄コーティングするフローチャートを図1に示す。
  1. イネ種子を浸種する。日積算温度で60~70℃以下とする。催芽機の利用が望ましい。乾籾も使えるが、播種後の出芽に時間がかかる。
  2. 吸水した種子60kgを110L容コンクリートミキサーに入れ、鉄粉と焼石膏を投入して造粒した後、網袋に詰める。2~3人の作業で1回の造粒に10~15分、300kgの造粒には1時間半程度を要す。
  3. 造粒直後より酸化発熱が開始されており、網袋に詰めたら直ちに大量製造機に入れて送風と水のスプレーを開始する(図2)。網袋は隙間がないようにならべる。
  4. ならべ終わったら布製カバーをして6~12時間酸化する(写真1)。酸化に伴い発熱するので、外気の吸引量を大きくして排気量を増やす。
  5. 水スプレーを停止した後、6~12時間送風して種子表面と装置内部の水を切る。
  6. 送風温度を35℃として24~36時間乾燥させる。
  7. 大量製造機を停止し、種子を厚手のビニール袋に入れ、紐で封をする。
    発芽率と1粒重を測定する。10または20アール単位でビニール袋に詰め、播種に供する。種子の発芽率が平均97%(最大100~最小92%)のとき、鉄コーティング種子の発芽率は94%(99~83%)であり、少なくとも半年間保存できる(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 鉄粉で粒度の小さいものは消防法における危険物に該当するため、大量に取り扱うには許可が必要である。一方、粒度の大きい鉄粉は危険物に該当しないが若干造粒しにくい。しかし、酸化反応が緩やかで発熱が少なく、安価であり、農業利用に適している。
  2. 酸化工程では放熱が必須である。そのため、本装置は設置場所の気温25℃以下で鉄コーティング比0.5以下の条件で使用する。また、酸化工程における送風機の停止は短時間のうちに種子を高温にさらし死滅させる。送風機の停止は乾燥工程が完了したときのみとする。
  3. 大量製造装置は温湯消毒種子等の農産物の乾燥にも使え汎用性がある。2008年1月より市販されている。
図表1 220485-1.gif
図表2 220485-2.gif
図表3 220485-3.jpg
図表4 220485-4.gif
カテゴリ 温湯消毒 乾燥 省力化 鳥害 播種

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