集水域における環境保全型稲作技術導入による流出負荷低減効果のモデル評価

タイトル 集水域における環境保全型稲作技術導入による流出負荷低減効果のモデル評価
担当機関 環境保全担当
研究期間 2005~2007
研究担当者 大林博幸
蓮川博之
柴原藤善(滋賀農技セ)
吉田正則(近中四農研)
大久保卓也
東 善広(琵琶湖研)
発行年度 2008
要約 水稲栽培における施肥・水管理の改善による栄養塩類等の流出負荷低減効果を予測・評価する重回帰モデルを開発し、平準降雨年における水稲栽培技術別の原単位を設定することで、琵琶湖集水域における環境保全型稲作技術の面的取組効果を定量的に評価できる。
キーワード 水稲、重回帰モデル、窒素流出負荷量、原単位、琵琶湖集水域、環境保全型
背景・ねらい
農業系からの汚濁負荷削減対策を実効性のあるものにするには、環境負荷低減技術の体系化とその面的な取組効果を流域レベルで定量的に評価・検証することが欠かせない。そこで、滋賀県でこれまで実施した現地調査をもとに、栄養塩類等の流出負荷量を予測する重回帰モデルを構築し、琵琶湖集水域の農地(水田率92%)における環境負荷低減技術(適正な水管理、施肥改善)の導入に伴う窒素等の流出負荷低減効果を定量的に評価する。
成果の内容・特徴
  1. これまでの水田流出負荷量調査(水稲作付期:33事例)の結果を総合的に解析すると、代かき方法、施肥法などの改善による流出負荷低減効果が安定して認められる(図1)。本法は、これら調査結果から各ほ場で取組んだ営農技術を説明変数、窒素流出負荷量を目的変数として重回帰解析を行い、得られたモデル式(図2)により営農対策の取組に応じた窒素の流出負荷量を予測する。説明変数のうち水管理や施肥法等のカテゴリデータはダミー変数に、降雨量は作付期間の平均日雨量を本県平準年(1999年)が1となる指数に、窒素施肥量は全施肥量に占める緩効性成分(有機質肥料は緩効性と見なす)の割合にそれぞれ変換する。
  2. 本モデル式により県独自の特別栽培米栽培基準(環境こだわり農産物栽培基準)実施時の窒素流出負荷量を算定すると、作付期間において63.9g/ha/dayと予測され、対策前(水管理は全て慣行、施肥法は速効性肥料の全層施肥が6割、緩効性肥料の側条施肥が4割の現状を想定)の予測値83.7g/ha/dayに対して24%の低減が可能と推定される(図2)。
  3. 得られた対策前の予測流出負荷量から用水流入負荷量(慣行水管理で58.6g/ha/day)を差し引いた全窒素の「用水差引排出負荷量(原単位)」は、本県で採用している原単位(水田)と大差ないことから、水管理毎の用水差引排出負荷量により、環境こだわり栽培をはじめとする営農技術別の原単位が設定できる(表1)。
  4. 原単位法を用いて、琵琶湖集水域での環境こだわり栽培による水稲作付期の流出負荷低減効果を評価すると、本県施策目標(2010年度)の取組面積30%の場合、対策前に対して琵琶湖集水域全体で2%、水田単独で14%の低減効果が期待される(図3左)。またGISを活用することにより、河川流域ごとの取組効果が視覚化でき、流域毎の施策評価も可能である(図3右)。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果は、農水省研究高度化事業(地方領域設定型、2005~2007年)において、琵琶湖集水域における流出負荷量算定モデルの開発に活用しており、また琵琶湖水質保全対策の政策シナリオ解析にも貢献できる。
  2. 水田からの流出負荷量は、気象や営農形態、土壌など地域の特性により変化するが、水田負荷量調査を重ねることで、地域の特性に応じた個々の環境負荷低減技術の影響評価が行える。
  3. 今後は、水稲非作付期・輪換畑等における流出負荷低減技術の確立を進めるとともに、リン、濁水、農薬成分も含め、流域レベルで様々な水質保全対策の負荷低減効果を総合的に評価する必要がある。
図表1 220542-1.jpg
図表2 220542-2.jpg
図表3 220542-3.jpg
図表4 220542-4.jpg
カテゴリ 土づくり 肥料 病害虫 環境負荷低減 栽培技術 水田 水稲 施肥 農薬 水管理

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