二次寄生蜂との羽化時期の違いを利用したチュウゴクオナガコバチの繁殖方法

• 担当機関: 熊本県農業研究センター
• 研究期間: 1997～1998
• 研究担当者: 行徳裕; 横山威
• 発行年度: 1998
• 要約: 九州では、チュウゴクオナガコバチは3月下旬～4月中旬に、本種の二次寄生蜂（随意的高次寄生者）は4月下旬～6月上旬に羽化する。羽化時期の違いを利用してチュウゴクオナガコバチの繁殖を助けるためには、ゴールが着生した剪定枝を本種の羽化が終了するまで園内に残し、二次寄生蜂（随意的高次寄生者）が羽化する前に処分する。熊本県農業研究センター・果樹研究所・病虫化学部
• 背景・ねらい: チュウゴクオナガコバチの繁殖は、二次寄生蜂（随意的高次寄生者）により抑制される。西南暖地では二次寄生蜂の密度が高く、チュウゴクオナガコバチの繁殖は緩慢で、クリタマバチに対する密度抑制効果が現れにくい。そこで、園内のチュウゴクオナガコバチを保護し密度を増加させる方法を検討する。

成果の内容・特徴

1. チュウゴクオナガコバチはクリタマバチのゴール内で越冬する。しかし、ゴールが着生している枝は通常、剪定し処分される。
2. 越冬場所であるゴールを園内に残すと、チュウゴクオナガコバチの繁殖が促進される（図1）。
3. 主な二次寄生蜂は、クリタマヒメナガコバチ、トゲクリタマヒメナガコバチ、トゲアシカタビロコバチの3種類である。3種の羽化時期は4月下旬～6月上旬であり、チュウゴクオナガコバチの羽化時期より遅い（図2）。
4. 剪定枝をチュウゴクオナガコバチの羽化が終了し、二次寄生蜂の羽化が始まる前、すなわち4月下旬に処分すると、チュウゴクオナガコバチの密度が高まり、クリタマバチに対する密度抑制効果が認められる（図3）。

成果の活用面・留意点

1. チュウゴクオナガコバチの分散速度は10～60[km]/年と推定されている。隣接地域で本種の発生が確認されている場合、放飼の必要はない。
2. 地域により寄生蜂の羽化時期が異なる。剪定枝の除去時期は技術適応地域におけるチュウゴクオナガコバチの羽化時期を調査し、決定する。

• カテゴリ: くり シカ 繁殖性改善